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2010-08-18

女「まさか君に見つかるとは思わなかったよ」

1 :名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/08/11(水)
彼女の悪い癖。

それは、なんの前触れもなく、かくれんぼをはじめること。

女「男、みっけ」

男「ん?」

もちろん、俺は隠れてない。

女「ふふ、次はボクが隠れる番だ」

知るか。勝手にやってろ。

男「……はぁ」

どこに隠れやがった。

こうやって、放課後にいつも始まるかくれんぼ。

隠れる気ゼロ。探す気ゼロ。

男「めんどくせー」

大声で言ってみる。

静かだ。

廊下に響いてやがる。

男「子供かっつーの」

つぶやいて、そろそろ本気モード。

あいつはいたってマジなので、こちらもマジで探さないと、見つからない。

情熱を賭けるところが、おかしいよな、あいつは。

男「トイレはスルー」

男子の立ち入れないところには、いかないやつだ。

だから、トイレに隠れることはない。

まあ、いるんなら入るけど。


2.
男「お」

スカートがチラリと見えた。

男「?」

もぞもぞ。

男「うお……」

頭隠して尻隠さず。

尻をフリフリしてやがる。

男「おい」

女「!」

女「おや」

おや、じゃねえ。

男「見つけたぞ」

女「ははは、今日の君は冴えているね。吃驚だ」

男「帰るぞ」

女「ボクが見つかったのだから、次は君が隠れる番だ」

男「うっせ。家に帰るときには真っ暗になっちまうだろうが」

女「むむ、それはいやだな」

男「だったら帰るぞ」

女「うむ」

男「……」

女「君がずっと見ていてわかるとおり。はまってしまってね。出れないんだ」

やれやれ。

男「ほら、抜くぞ」

ぐいっ。

女「そんな力じゃ抜けないぞ」

上から目線だな、こいつ。

男「よいしょっと」

女「本当に抜く気があるのかい?」

説明が遅れた。

今、こいつは机にはまってしまっている。

机といっても、なんだか特別な机だけど。

男「こんなのの下によく入ろうとしたな……」

女「見つからないと思って選んだ場所さ」

男「俺だったらまず、上半身は入らん」

女「はは。君とは体が違うからね」

当たり前だ。


3.
女「それにしても、本当に君はボクを抜く気があるのかい?」

男「うっせえ」

尻を力強く持つなんて、できるか。

女「もっと力強くしてほしいものだ」

男「ほう……後悔しないな?」

女「こうかい? ボクは海賊かなにかか?」

男「航海じゃねえ」

女「ははは、そうか。後悔、だな。了解、頼んだよ」

力強く、尻を掴む。

女「!」

ぐいっ すぽん。

男「よーっし。抜けたぞ」

女「やあ、男くん」

……暢気なやつだ。

女「太もも、という選択もあったんじゃないのかな?」

男「それじゃあ見えちまうだろ」

女「ボクは君に見られても恥ずかしくない。むしろ、君にお尻を掴まれるほうが恥ずかしい」

どういう基準だ。

女「それでもまあ、お礼はしておこう。ありがとう」

男「どうも」

女「とりあえず、教室に戻ろう」

男「おう」

荷物、置いたまんまだからな。

女「ふふ、次はどこに隠れようかな……」

男「……はぁ」


4.
こいつは本当に、なにを考えてるかよくわからない。

いつも笑顔を絶やさず。

いつも俺の側から離れず。

いつも俺と帰りをともにする。

そんなやつ。

男「この前、喫茶店が新しくオープンしてたな」

女「喫茶店なんて、ボクにはお洒落すぎるよ」

男「そうか?」

女「ああ。ボクはそれなら立ち食い蕎麦がいいね」

変なやつだ。

女「ボクは、君が思っているほど、お洒落じゃないよ」

別に思ってないけどな。

女「見ての通りの、地味な女の子さ」

男「うそつけ」

女「嘘をつけ? ボクはとても派手な女さ」

男「うそをつくな」

女「じゃあ、地味な女の子さ」

男「はぁ……」

疲れる。

女「君はおかしい人だね。人に嘘をつけだの、嘘をつくなだの」

男「あー、もういいから」

女「おや? 気分を損ねてしまったかい?」

男「はい、損ねました」

女「それは困ったなぁ。ボクは大したことができないし」

男「なにか面白いことしてみろ」

女の顔が一瞬、思案顔に。

すぐに笑顔になって。

女「すまない、顔は白くない」

男「面、白いことじゃねえよ!」


5.
女「おや、では、なんだい?」

男「おもしろいことだ」

女「ほほう、おもしろい……。興味をそそられて、心が引かれるようなこと…」

女はまた、思案顔。

そんなに悩むな。悩んだ分だけしらけるぞ。

女「うむ」

男「ん?」

女「今日のパンツの色は――」

男「!」

女「――教えない」

俺の希望を返せ。

いや、別に知りたくないけどな。一応な。

女「ふふ、興味をそそられたかい?」

男「全然」

女「おや、そうか。でも考えてみろ」

やだよ。

女「さっき、君が太もも、あるいはそれ以下の部位からボク抜いていた場合、見えたはずのパンツだ」

なにを熱弁してるんだこいつは。

女「しかし、君はボクのお尻を選んだ」

男「選んだつもりはねーよ」

女「むむ? ならば、ボクのお尻を掴むしか方法がないと思っていたのか?」

ああ、めんどくさい。

男「そうだよ……悪いか?」

女「悪くはない。全然」

なら、これで話は終わりだ。

女「そうか……君はすでにさらにもう一つ上の領域に達していたわけか」

どこの領域だ。

女「うーん、負けた! 喫茶店に行こう」

男「は?」

女「あれ? そういう話じゃなかったっけ?」

そんな話にはなってないんだが。


6.
男「お前が一人であさっての方向に語りかけてたんだろ」

女「ボクは君にずっと話をしていたよ」

男「知ってる」

女「ならば、君はあさっての方向なんだね」

男「そういうことじゃない」

女「辻褄が合わないよ」

男「めんどくせー!」

なんて。

毎日こんな感じ。

めんどくさいやろうだ。

それでも、俺とあいつは離れない。

なんでだろうな。

俺もよくわからない。

女「それじゃあ、また明日」

男「って、明日は学校休みだぞ」

女「? 喫茶店だろう」

男「……ああ」

そうだったな。本当に行くんだな。

女「言っておくが、ボクはメールは苦手だから、電話で頼むよ」

男「おう」

女「じゃあ、男」

男「……」

あいつが俺の名前を呼ぶのは、かくれんぼのときと、別れるときだけ。

……別に、気にしてるわけじゃないけど。


7.
それでもなぁ。

毎回毎回『君』って呼ばれるのも。

なんか、嫌だ。

男「……」

さて、帰るか。

めんどくさい妹がいるので、俺はここから持ち前のスルースキルを発揮しないといけない。

行くぜ!


女「やあ」

男「おう」

女「昨日もお盛んだったようだね」

男「俺は妹と何をしてるんだ」

女「もちろん、ナニをしていたんだろ?」

アホか。

こんなことを平気で言えるとは、こいつ……。

男「変態め」

女「助平といって欲しいね」

男「どっちも似たようなもんだ」

女「失礼な!」

いきなり怒り始めた。なんだなんだ……。

女「ボクは助平であり、色事を好むが、変態は行動にうつすもののことだ!」

男「色事好むのかよ!」

こんなこと、普通はいえないよな。

女「さて、それじゃあ」

仕切りなおしして。

女「そろそろ、行こうか」

男「おう」

女の服は、そりゃもう地味なもんだった。

さすが自称・地味女の子。


8.
女「……悪い」

ん?

男「何か言ったか」

女「ぼ、ボクにはやはり合わないよ」

男「そうか?」

女「き、君にも合わない」

お前が言うな。

お前が決めることじゃないだろ。

男「うっせ、入るぞ」

女「やはり、ボクも入らなきゃダメなのだろうか?」

男「そういう約束だろ」

女「わ、わかった……」

女は、本当に嫌らしい。

いやらしい。なんか、いやらしいな。

こいつ、臆病者だな。

チキンだ。日本で愛されているチキンだ。

こいつを食べる気は、さらさらない。

どうやら俺は、嫌らしい。いやらしい。

女「むむ……ボクにはやはり合わない」

男「地味、だからな」

女「ああ、そうだ」

きっぱりしてやがる。


9.
女「こんなにお洒落なお店はボクに似合わないよ」

男「お前がお洒落になればいい」

女は笑顔で顔を横に振る。

女「嫌だね。そんなことするなら君に体を売るよ」

どうかしてるな、こいつ。

女「ふふ、冗談だけど」

ちょっと信じた俺に謝れ。

いや、別に期待はしてないけどさ。

男「冗談でよかったぜ」

女「ふふ、それはよかった」

こいつは俺で楽しんでるのだろうか。

女「とりあえず、注文しようか。なにがいい?」

それは俺がするもんだ。

男「じゃあ、コーヒー」

女「ボクも君と同じものにするよ」

男「大丈夫か? ブラックだけど」

女「ボクは君と同じものがいいんだ」

男「そうかい」


10.
男「すいませーん――」

女「ブラック二つ」

……なぜお前が頼む。

女「ふふ、楽しみだね」

男「ふつーのコーヒーだろうが」

女「そうとは限らないよ。勝手に決めるのはよくない」

うるせーうるせー。

女「なんだかだんだんと、居心地がよくなってきたね」

男「そいつはよかったな」

女「うん、君がいるからかも」

男「……」

女「なんてね」

冗談でも、こういうことは言われたくない。

なんか、うん、まあ。

なかったことにしてくれ。

男「お、来た来た」

女「待ってました」

男「ん」

女「なんだい?」

男「ミルクと砂糖だ」

女「やはり君は、ボクを舐めているみたいだね」

男「舐めても美味しくないだろ」

女「じゃあ、食べているみたいだね」

男「何言ってんだ」

意味わからん。

女「そんなものは必要ない。普通に飲めるよ」

まあ、そうか。

こいつなら普通に飲めるかもな。

ごくりごくり。

ごく……。

男「ん? どうした」

女「ん……苦いね」

やっぱり無理じゃねーか。


11.
男「ほれ」

女「だから、いらないよ」

男「苦いなら無理するな」

女「大丈夫だから、気にしないでくれよ」

やれやれ。もう知らん。

ごくりごくり。

ちびちび。

男「そうやって飲むと、余計苦いぞ」

女「豪快に飲めばいいのかい?」

男「そうは言ってないが、普通に飲め」

女「むう、苦いからね」

だからミルクか砂糖入れろよ。

男「なんで無理してんだよ」

女「君と同じものが飲みたいからさ」

男「ふーん」

女「素っ気無いね」

男「……」

こいつは本当にめんどくさいやつだ。

男「苦いな、ちょっとミルク入れよっと」

女「じゃあボクも」

男「ああ、そうしろそうしろ」


12.
そのあと、俺はこいつは全然飲めないことが発覚し、ミルクも砂糖も全部いれることになった。

甘ったるい。こんなのコーヒーじゃない。

女「いやあ、美味しかったね」

男「……そうだな」

女「? ご機嫌斜めかい?」

男「ちょっとな」

まさかあそこまで飲めないやつだとは思わなかった。

女「まあ、君にはまだまだ大人な味だったかな?」

男「うっせ」

ぺちり、と頭を叩く。

女「なるほど、身長を生かした素晴らしい攻撃だね。ボクには真似できないよ」

まあ、お前の身長じゃな。

女「できることは……それっ」

と。

やつは俺の胸に軽くタックルをした。いや、頭突きをした。

女「これくらいかな」

男「俺の攻撃より強いと思うんだが」

女「そうかもね」

くすくす。

笑うな。


13.
女「さて、どうしようか」

男「帰るか」

女「つまらないよ、そんなの」

男「じゃあ何するんだよ」

女「あの公園に行こう」

あの公園。

別におもしろいものもない、公園。

女「ボクたちが出会った、あの公園に」

……たしか、そうだったな。

男「行ったところで、どうするんだよ」

女「どうもしないさ」

じゃあ何で行くんだ。

女「ただ、行きたくなったんだ」

気まぐれ。

ただの、気まぐれ……なのか。

女「君も、暇だろう?」

男「まあな」

女「じゃあ、行こう」

男「おう」


14.
あの公園。

本当に何もない。

なんだここ。

本当に――。

女「どうやら、公園じゃなくなってるみたいだね」

男「……そうだな」

女「まあ、昔のことだしね」

男「……ああ」

女「しかたないさ。公園で子供が遊ぶことなんて、ないし」

男「……」

女「なにもない公園だったし」

だからって。

無くなっちまったのか。

あのボロっちいベンチも。

あの水が温い水道も。

無くなっちまったのか。

男「……」

女「じゃあ、行こう」

男「……おう」


15.
女「気を落とすなよ」

男「おう」

女「ボクはこんなにピンピンしているんだから」

男「お前は悲しくないのか?」

女「なんで悲しくなるんだい?」

そこに疑問を持つか。

女「あそこは、ボクにとって価値のあるところじゃない」

男「……」

つまり、俺と出会ったことは価値のないことってか。

女「ボクは今が、価値あることだと思うから」

男「!」

ニッコリと、俺に微笑みかける。

女「それじゃあ、男」

どうやら、お別れらしい。

俺の名前を呼んだから。

男「おう」

俺も、一応返事をした。


16.
男「やれやれ」

なんなんだろうな。

あいつとは、本当に、離れない。

男「ただいま」

俺のスルースキルを使えば……今日こそは。

妹「おかえりんご」

男「……」

妹「今日もスルーするー?」

男「……」

妹「あらあら、ご機嫌が悪いみたいで」

耐えろ、耐えろ。

妹「返事をしろおおい!」

男「ぐふっ!」

いきなり蹴ってきやがった!

妹「今日も、女さんと遊んできたの?」

男「うるさい、お前には関係ないだろ。それと遊んできたわけじゃない」

妹「ほほう、デート?」

こいつには制裁を加えてやらんといけないみたいだ。

男「どりゃああああああ!!」

妹「やるかにーちゃん!」

やっぱり、俺にはスルースキルが無いみたいだ。


17.
女「昨日も派手にやったみたいだね」

男「おう……」

女「ふふ、君は本当に面白いね」

男「白くねーよ」

女「そうだね。面黒いね」

男「黒いのか!?」

女「ああ、真っ黒だ。まっくろくろすけだ」

俺はススワタリか。

女「話がズレてるよ。君はおもしろい、ということだ」

男「そうかい」

女「もっと嬉しがってもいいんじゃないかな?」

男「お前に言われても特になにも感じないよ」

女「はは、そうかもね」

男「……」

態度が、大人だ。

女「今日も一日、頑張ろう」

男「おう」

女「しゃきっとしなさい」

男「へいへい」

笑顔でこっちを見るな。


18.
放課後。

もちろん、当たり前だけど。

女「男、みっけ」

男「……」

また、始まった。

恒例の、かくれんぼ。

だけど、今日は違った。

なにが違ったのか。

それは――

女「ボクを見つけられなかったら、ボクの言うことを聞いてね」

――と、言ってきた。

おもしろい。

今日はどうやら、自信があるみたいだ。

ならば、意地でも探してやる。

そして、まあ、これは言ってないけど。

見つけたら、俺の言うことを聞いてもらおう。

たっぷり可愛がってやるぜ……。

とまあ、あいつを可愛がるつもりなんて、これっぽっちも考えてないけどな。


19.
男「さて」

今日はどこに隠れてやがる。

こう毎日毎日、隠れてるんだから、もう隠れる場所も限られるだろうに。

それでもあいつは。

男「綺麗に隠れるんだよな」

……前回はひどかったけど。

男「あそこには、隠れたことなかったな」

と、いうわけで。

隠れたところは全部探さなくてもいいだろう。

残すは……。

自分の教室だ。


今、俺は自分の教室にいる。

あいつの狙いは、多分。

俺が廊下に出た瞬間に、どこからかわからんが、教室に侵入するつもりだろう。

なぜそう思うのか。

ここ以外は、もう全部隠れているはずだからだ。

職員室にいたときは正直驚いた。

男「うむ」

とりあえず、廊下に出よう。

そして、ちょっと奥に行って……。

探すふり。

探すふり。

これくらいでいいだろう。

男「戻ろう」


20.
男「……」

うわあ……。

今日もクオリティ低いな。

男「見つけた」

女「!」

カーテンに巻きついてるとは……。

女「おや……」

男「見つけたぞ」

女「……はは、見つかってしまったね」

ああ、見つかっちまったな。

男「ん?」

女「? どうしたんだい?」

なんだか、こいつの笑顔にすこし、違和感。

男「どうした?」

女「いや、別に、なにも」

男「……」

なにか、隠してるな。

女「じゃあ、帰ろうか」

男「待て」

男「言うこと聞け」

女「え?」

男「見つけられなかったらお前の言うことを聞く。そして、俺が見つけたら俺の言うことを聞く」

女「そこまで言ってないぞ」

いや、今俺が決めた。

男「それだったら、せこいだろ」

女「……なんだい?」

男「そうだな……」

どうしようかな。なにをしてもらおう。

なんて、全然考えてなかった。

もう、決まってたから。

男「お前の言うことを聞いてやる」

女「え?」


21.
彼女はこの上なく思案顔で、

女「なぜ、君がボクの言うことを聞くんだい?」

男「命令だ。お前は俺に言うことを聞かせろ」

女「……いいのかい?」

男「おう」

女「……」

ジトーっとした目でこちらを見やがって。早く言えよ。

女「そうだな……」

考えるなよ。

女「海に連れて行ってください」

男「……は?」

女「海に、連れて行って、ください」

区切らんでもわかる。

つか、区切ったところで変わらんだろう。

男「えーっと、海?」

女「うん、海」

男「一人で行け」

女「約束は守るものだよ?」

男「……はぁ。了解いたしました」

凄く普通で、安心した。

でも、めんどくせー。

女「もちろん、水着は持ってくるように」

男「泳ぐのか!?」

女「もちろん」

男「誰が得する?」

女「すくなくとも、君は得するよ」

男「なんで?」

女「ボクの体に興味はないのか?」

……すまん。

まったくない。


22.
男「ない」

女「少なからずあるだろう?」

男「ない」

女「どうして?」

男「ないもんは仕方ないだろ」

女「ふむ……そうか」

男「まず、その口調をどうにかしろ」

女「口調? ボクの口調は、どこか変なのかい?」

ボクだよ言わせんな恥ずかしい。

女「ちょっと待ってくれ」

男「ん?」

女「ボクの体について話をしていたのに、なぜ口調が絡むんだ?」

男「……」

そういえばそうだな。

女「つまり、体については申し分ないということで、いいのかな?」

男「お前の体のどこを見ても、長所がないだろ」

女「たしかに、胸は小さいし、お尻もたいしたことはない。でも、ひとつあるよ」

男「なんだ?」

女「まだまだ初々しさが残っている」

いやいや、なんの初々しさだよ。

女「どうだい?」

男「どうだと言われても」

初々しさについて詳しく教えていただきたい。

女「うむ……じゃあ、得するのはボクだけだ」

男「そうなるな」

そりゃあ、行きたいところに行けるんだから。

女「君の自転車の後ろに乗れるからね」

げ。

俺の自転車で行くのかよ。


23.
男「俺の自転車かよ……」

女「連れて行くのが、君の役目だからね」

男「じゃあ、連れて行ったら、帰っていいんだな?」

女「そのあと、ボクの相手をしてもらおう」

男「えー」

なんだよそれ。

女「言うこと、聞いてくれるんだろ?」

男「そうだけども……」

女「ふふ、楽しみにしてるよ」

楽しみにされちまった。

女「もちろん、言うことを聞いてくれたら、少しくらいご褒美をあげるよ」

男「ほほう」

ちょっと気になる。

女「だから、いいかな?」

男「まあ、断れないしな」

女「うん」

男「じゃあ、帰るか」

女「そうだね」

いつになく、こいつ、テンション高いな。

なんか、気持ち悪いぞ。


24.
女「水着、あるのかい?」

男「あるっちゃああるかな」

女「ボクは君の体には、少なからず興味があるからね」

男「……」

そういうことを平気で言うな。

男「どんな水着でもいいだろうが」

女「そうかな?」

首をかしげる女。

女「考えてみてくれ。もしもボクが、パンツを穿いていなかったら……」

男「変態だな」

女「そう。昨日君が言った変態になってしまう」

男「そんなやつの隣にいたくないんだが」

女「まあ、聞け。ちゃんと穿いている。ここからが本番だ」

なんだよ本番って……

女「ボクがもしも、男物のパンツを穿いていたら? しかもトランクス」

男「……」

いや、別に。

変なやつだと思うよ。

男「変態」

女「でもパンツはパンツだ!」

大声でパンツパンツ叫ぶな。


25.
女「と、いうわけで、もしもボクがボクのお兄ちゃんのトランクスを穿いていたらどうするんだ?」

男「お前、兄ちゃんいたっけ?」

女「いない」

いないのかよ。

男「だから、変態だっていってんだよ」

女「変態ではない。そういうのをブラコンというんだ」

兄のいる設定続いてたのかよ。

男「重度のな」

女「それでは、ボクがシマシマのパンツを穿いていたらどうおもう?」

男「別に」

なにも思わん。

女「男物の」

男「趣味悪い!」

シマシマにだまされた!

男「お前は親父か!」

女「最近になって、そんな変なパンツを穿く父親はいないだろう」

いると思うけど。

男「とにかく、もうこの話は無しだ」

女「じゃあ、最後にひとつ」

男「……なんだ?」

女「今度の水着、何色がいい?」

男「……」

女「興味のない君には、答えるのは難しいかもしれないね」

おう、その通りだ。


26.
男「じゃあ……赤」

女「派手な色はちょっと……」

顔を赤らめるな、恥ずかしい。

女「そんな色の水着は持ってないし、着たくない」

男「じゃあ、どんな色がいいんだよ」

女「ボクが持っている水着は紺色だ」

男「じゃあ、それで」

女「了解した。楽しみにしといてくれ」

一応言っておくが、俺は赤の水着が見たかったから言ったわけじゃない。

多分、こいつは嫌がると思って言ったまでだからだ。

女「それじゃあ、男」

おっと。

どうやらお別れの時間だ。

男「おう、じゃあな」

女「明日はよろしく頼むよ」

……明日行くのか。

男「明日行くのか?」

女「明日はおやすみだよ」

そうだけども。

男「早くないか?」

女「ボクはワクワクして、すぐに行かないとこの気持ちが破裂してしまうよ」

男「わかったわかった」

女「ふふ、ありがとう」

男「じゃあな」

女「じゃあね」


27.
さて。

俺は帰ってすぐに、水着を探した。

……まあ、トランクスっぽい水着。

もっこりとかしないやつ。

してたらあいつにはどう思われたんだろう。

まあ、どうでもいいか。

妹「どこいくのー?」

ぎく。

めんどくさいやつが、俺に話しかけてきた。

つか、俺の部屋に勝手に入ってきてやがる。

男「どりゃっしゃあ!」

俺の光速を超える攻撃!

妹「あまいあまい。蜜より甘い」

男「くそ……」

俺のあまったるいパンチは防がれた。

どうやら、やつは光速を超越しているみたいだ。

男「やるな、妹!」

妹「どうでもいいから、明日の予定を一言で言ってみなさい」

男「お泊り会」

妹「うそつけ」

男「嘘をつけ? お泊り会」

妹「嘘じゃない! 馬鹿!」

ぼこっ。

お前のパンチ……きいたぜ。


28.
妹「で、どこ行くの?」

男「海」

妹「ついていきますお兄様」

男「無理」

妹「なんで?」

男「いやだ」

妹「ああ、なるほどなるほど……」

なんだ、そのわかったみたいな顔。

妹「女さんとなんだね……うふふ」

男「潰す。おもに胸を」

妹「な、なんですとー!」

男「お前がいると面倒くさいからいやなの」

妹「くさくないし!」

男「面倒なの」

妹「剣道じゃないし!」

男「邪魔なの」

妹「そんなに言う!?」

男「うん」

この流れですら、こいつは面倒だ。

妹「わかりました!」

男「わかってくれたか」

妹「私がいると、邪魔なんでしょ?」

なにニヤついてやがる。

男「そうだ」

妹「うん、『邪魔』なんだよねー」

男「?」

こいつ、なんかむかつく。

なんでにやついてるのかわからんが、むかつく。


29.
そして。

来てしまった。

当日。

俺の携帯がぶるぶると震えている。

『女』の文字。

男「もしもし?」

女『ワクワクしすぎて、君の家の前まで来てしまった』

男「ほほう」

俺の部屋の窓から、見れるし、見てみるか。

男「!!」

あいつは、バカだった。

男「なんだその格好は!?」

女「? 水着だが」

スクール水着、というところで驚かされるが、それ以上に。

ここは海じゃない。

まじてや、プールでもない。

男「なんでお前、すでに着替えてるんだよ!?」

女「だから、ワクワクし過ぎてしまって」

男「いやいや! ワクワクの枠をこえてる!」

女「ワクワクの枠? ふふ、おもしろいね」

男「い、いいから着ろ!」

女「忘れてきてしまった」

バカとアホだった。マヌケだった。


141:XOSLno9n0
うっひょー!



30.
男「……じゃあ、今お前の持ってるそのバッグには……」

女「タオルしか入ってない」

行くときに軽いとか感じろよ!

女「それじゃあ、行こうか」

男「本当にそれでいいのか? お前の家に寄ってもいいんだぞ?」

女「いや、いいさ。
  ワクワクしてしまっている気持ちは、君の自転車の後ろに乗ることで、緩和できる」

いや、意味わかんねえって。俺との会話ができてないって。

女「さあ、いざゆかん!」

男「は、はあ……」

女「あっ……」

変な声を出すな。

男「どうした?」

女「この後ろって、冷たいね」

そんな格好してるからだ。

男「! おい」

女「なんだい?」

男「なんでくっつく」

女「? 落ちてしまうじゃないか」

そうだけども。

スクール水着でやめてほしい。

女「ボクの体に興味がないんだから、大丈夫だろ?」

まあ、そうだけども。


31.
男「待て、それじゃあ俺がなにか気にしてるみたいじゃないか」

女「それなら、いいじゃないか。ぎゅー」

むかつく。

でも、まあ、たしかに。

落ちちゃうし。

しかたないか。

よし、出発。

女「いやぁ……気持ちいいね」

男「風がな」

女「うん」

男「……」

後ろにスクール水着の女の子を乗せて自転車をこいでいる俺を、人はどうみているのだろう。

犯罪のにおいは、していないはずだが。

女「ふふふ」

笑うな。

男「なんだよ」

女「楽しみだよ」

男「そうかい」

女「君はどうなんだい?」

男「俺は……」

別に、楽しみじゃない。

なんて、言えないし。

男「楽しみだな」

女「嘘は、つかなくていいから」

……お見通しさ。


32.
お見通しさ。こいつには。

なんでだよ!?

俺は口に出してねーよ!?

男「……は?」

女「嘘はダメだよ。正直に言ってくれよ」

男「悪いけど、楽しみじゃない」

女「やっぱり、嘘ついてたんだね、君」

男「ああ」

まあ、正直に言ったほうが、いいのかもな。

女「……残念だ」

ボソッと、なにか言った気がした。まあ、独り言だろう。

着きました。

男「着いたぞ」

女「そうだね」

男「? おい」

女「なんだい?」

男「はしゃいで来いよ」

女「君と一緒にはしゃぐから、まだいいよ」

なんだそりゃ。

まあ、いいか。

男「着替えるの時間かかるぞ」

女「だったら、君も水着でくればよかったね」

男「なにをふざけたことを」

女「早く着替えてくれよ」

男「なんでだ」

女「期待してるから」

こいつ、変態だ。


33.
男「わかったよ。ちゃっちゃと着替えてくる」

女「うむ」

やれやれ。

男「とりあえず、さっさと着替えよう……」

あとでいろいろ言われるのも癪だし。

それにしても、あいつは海にスクール水着のまったくのバッドマッチングをわかってないのだろうか。

まあ、あいつが恥をかくだけさ。

俺には関係ない。

男「よし、着替えた」

これだったら着てくりゃよかった。

とりあえず荷物をバッグに入れて。

男「おーい」

女「!」

なぜ驚く。

女「ふむ……」

いきなり不機嫌そうな顔。

女「もっこりしてないね」

男「何を求めてんだ!」

女「もっこりを求めているんだ」

男「普通に言うな!」

女「トランクス型か……非常に残念だ」

畜生、変態め!


34.
女「それじゃあ、行こうか」

男「おう」

女「なにして遊ぼうか?」

とりあえず入ろうぜ、ここまできたら。

男「とりあえず入ろ――」

女「砂遊びでもしようか」

なにを言ってるんだこいつは。

男「海に来たんだから、泳ごうぜ」

女「はっきり言っておこう」

男「?」

女「ボクは、あまり泳げないんだ」

早く言え。

男「どれくらい?」

女「うーんまあ、あまり泳げない」

男「じゃあ行こう」

女「ボクが言っていることを無視したね」

男「泳ぐ練習をすればいいじゃないか」

女「ふむ……」

チャンス! こいつのあっぷあっぷする顔が見れるぞ。

いや、見たいわけじゃなく。

ほんとだからな。

女「なにも海で練習なんて、危ないだろう」

正論を言うな。

女「それならボクは……これを使う」

浮き輪、か。


35.
男「って、ばかやろう」

ぺしん。

と、また頭を叩く。

女「なんだい」

ちょっと機嫌悪そうに振り向く。

男「見栄えが悪い」

女「見栄えを気にするのかい?」

男「さすがに高校生がスクール水着で浮き輪はマニアックだ」

女「しかし、ボクはあまり泳げないし、水着はこれしか持ってない!」

水着は買え! 泳げないなら練習しろ!

……泳げないのは、意外と可愛いな。

なんて、思うと思ったか!

男「とりあえず、浮き輪没収!」

女「そ、そんな……」

そんなシュンとするな。俺がとてつもない悪みたいじゃないか。

男「とりあえず、ほれ」

ギュッと、手を掴む。

女「?」

男「入るぞ、海」

女「わ、わかった……溺れたら、助けてくれよ?」

誰が助けるか。


36.
そのあとのことは、語りたくない。

あいつはむかつくほどに泳ぐのがうまかった。

俺以上に。

どこが泳げないんだ。

人並み以上じゃねえか。

女「やっぱり、ダメだね」

ふざけるな。

こいつのダメはそうとう上のランクだ。

女「どうしたんだい?」

きょとんとした顔で、俺に話しかける。

女「とても気持ちいいよ?」

ぱしゃぱしゃと、俺に海水をぶっかけてきやがる。

女「もう、どうしたんだい?」

男「泳ぐのうまいな」

女「え?」

なんだその驚きは。

女「ボクが、かい?」

男「ああ、そうだ」

女「ははは、そんなことないよ」

謙遜すんな。

男「……」

女「はぁ」

やれやれ、と聞こえんばかりの溜息を吐いた。

俺じゃなく、あいつが。

女「すこし、浜を歩こう」

スクール水着の女の子と歩きたくないんだが。


37.
女「さて」

男「ん?」

女「君の機嫌の悪さについて聞こう」

男「別に」

女「おや」

わかってるだろ。

嘘ついたのがわかるんだから。

女「当ててあげよう」

わかってるんだろ。

女「ボクの体が、本当に魅力的じゃなかったことに、怒ってるんだろ?」

男「ちげえよ」

興味無いって。

女「む、そんなに怒ることはないじゃないか」

男「怒ってない」

女「怒ってないのか。なら、今ボクは怒っている」

男「なんで?」

女「君があまりにも鈍いからだ」

男「え?」

女「ふんっ」

こいつ、なんなんだ。

男「どうしたよ」

女「言っていいのかい?」

なんだよそれ。

男「早く言え」

女「ボクは君が好きだ」

男「……」

なんだそりゃ。

今日は4月1日じゃないぞ。

男「ふーん」

女「流さないで聞いてくれ」

なんだよ。マジで。

なんだよ!?


38.
男「なんだよ、それ。冗談でもつまらん」

女「冗談じゃない。本当だ」

男「嘘をつくな」

女「だから、ボクは君が好きだ」

男「黙れ! 嘘をつくな!」

女「嘘じゃないと言っている!」

男「毎日毎日会ってるのに、俺の名前を呼ばないお前がか!?」

女「そうだ、ボクがだ」

男「なんだよそれ……」

ふざけんなよ。

意味、わかんねえ。

なんで涙流してんだよこいつ……。

女「言ってしまった」

じゃねえよ……

女「でも、言えてよかった」

男「!」

女「ふふ」

涙流しながら笑ってやがる。

器用なやつ。

畜生。

畜生。

こいつ。

それを言えよ。

俺は……。

俺たちは。

図らずも、両思いだったのか。

女「返事を聞こう」

男「……」

女「……さあ!」

男らしいなこいつ。

女「……」

涙が溢れてボタボタ落ちてる。

……やれやれ。


39.
そっと、抱きしめてみる。

女「!」

驚くのも、無理ないよな。

女「……?」

うえー。

海水でべたついてる。

男「俺も、好きだ」

早く離れたいぜ、ベタベタして気持ち悪い。

女「なるほどね」

男「あん?」

女「下半身が、べたべたする」

男「!?」

女「君のトランクス型の水着が、ベタついてるからだね」

俺もそれは感じていた。

俺は上半身もだぜ。きもちわりぃ。

女「そして、ボクと君は、ベタついてる」

男「……」

女「本当に、うまいね。君は」

男「こういう時まで、『君』かよ」

なんかすっきりしねー。

女「あはは、ボクは君に一度も名前を言われたこと、ないけどね」

……。

男「うそだぁ~」

女「本当だよ、まったく」


40.
怒ってるみたいだ。

女「嘘であって欲しいね、本当に」

男「悪かったね、女」

女「遅いよ、もう」

男「すまんすまん」

気づかなかった。

女「男」

男「あん?」

女「キスをしよう」

男「……」

いきなり積極的になるな、こいつ。

男「やだ」

女「なんで?」

男「海水で、唇だって、ベタついてるだろ」

女「そうだな……」

うおっ。

こいつ、唇舐めまくりやがって。

女「これで、いいだろ?」

俺は……。

逃げる!

女「ちょ、ちょっと!?」

男「だーれがするか!」

女「なぜ!?」

恥ずかしいし。

こいつ可愛いし。

正直、スクール水着可愛いし。

無理!

顔を近づけるだけで、む――。

どしゃあ。

男「んのやろ!」

女「逃がさないぞ!」

足首掴みやがった!


41.
女「さあ、しよう!」

ほぼ強制だ!

男「次は砂がついてるじゃねえか!」

女「拭けばいい!」

男「絶対にベタベタしてるから!」

女「してない! ボク達はベタベタだけど!」

古典的と言いたいのか!?

はぁ……。

男「とりあえず、落ち着け」

女「む、わかった」

男「ふぅ……」

女「……?」

男「動くなよ? あと、目をつぶれ」

女「わかった」

男「はい! 俺は動くなって言いましたー!」

女「ず、ずるい!」

男「うるせー!」

女「なら、いい」

男「なに!?」

それは困る。

なんか、楽しくなってきたのに。

男「おい、ふざけるな」

女「楽しんでる君が、腹立たしい!」

男「なにを!」

ひどいこといいやがる!


42.
男「じゃあ、どうしたら再開できるんだ!?」

楽しみを奪うな!

女「そうだな、ボクにキスをしたら……はむっ」

男「よし、これでいいんだな」

女「あ……え、えーっと……」

男「……あれ?」

女「えーっとその……」

こいつ、なんで顔真っ赤に!?

あれ? なんで俺も真っ赤に!?

女「して、くれたね」

男「うおおおおおおおおおお!!!」

俺はなんということを!?

え!? マジで!?

女「男、大好きっ」

男「や、やめろ! 恥ずかしい!」

女「ボクの愛を受け入れてくれないのかい?」

男「まだ準備ができてないんだ!」

女「これからすこしずつでいい。大好きだよ、男」

どこまでも男前だなお前はぁぁぁぁ!!

俺のがよっぽど女々しいぜ……。

本当に。

まあ。

こんな感じが、俺たちには合ってるよな。

Fin



198:Xa4vtf9PO
俺、こんな青春を何処に置き忘れてきたんだろう……

あれ?どうして家に居るに目から海水が……



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