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2010-07-18

奴隷商「さあさあ、本日の目玉だよ!」

1 :名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/05(日)
奴隷商「いかがです!何と人間の娘です!」


奴隷商「南の大陸より自力でこちらまでやってきた初の人間!」

奴隷商「ですが!悲しい事に彼女はこの国に害を為そうとした!」

奴隷商「悲しい事ではあります。が!反逆を企てた以上、罰せねばなりません!」

奴隷商「初めて来訪した小さな反逆者!さあ20万からです!」

客A「25万!」

客B「28万!」

客C「30万!」

魔王「100万」


魔王「税金な訳ないだろ、あいつらめ……」

女勇者「……」

魔王「……まさか本当に人間が売り出されるとは思わなかったぞ」

魔王「反逆罪を侵した場合、その度合いにもよるが基本的には処刑又は奴隷として売り出される」

魔王「わざわざ海を越えて、お前は一体何をしたんだ?」

女勇者「……黙れ、悪魔が!」

女勇者「何をしにだと?魔王、お前倒しにだ!」

女勇者「あれだけの殺戮を行い、やっとの思いで辿り着いてみれば……
    一思いに殺せばいいものをドレスを着せられ身を売られ」

女勇者「あまつさえ、魔王が買うだと?お前は何処まで人を侮辱し、踏みにじれば気が済むんだ!」

魔王「人間程度に俺は倒せない。そもそも殺戮など……」

女勇者「とぼけるな!私は……あの非道を許しはしない!」

魔王(何か妙な話になってきたな、どうしよう)


2.
魔王「許さないならどうする?武器は取り上げられ、丸腰同然で魔王の前にいる」

魔王「いくらでも弄ぶ事はできるぞ?」

女勇者「どんな屈辱にも屈するつもりはない!それに、女である事なんて昔に……」

魔王「ならば俺が思い出させてやろう」

女勇者「……っ」

魔王「そう睨むな、冗談だ。暴行する趣味はない」

魔王「……とは言え、勇者を捕らえてしまった以上、つまらなくなるな」

魔王「どうせ暇を持て余しているのだ。どれ、お前と共に人間の町々を回ってみるか」

女勇者「……は?」

魔王『勇者は魔王の奴隷となった、と宣伝しつつそのリアクションが見れる。さぞ楽しいものだろう』


魔王「……という訳で、しばらく人間の大陸に行ってくる」ボソボソ

側近「他が黙っていませんよ?」ボソボソ

魔王「適当にあしらってくれ。戻ってきてから俺が動こう」ボソボソ

側近「……分かりました。そちらの方は宜しくお願いします」ボソボソ

女勇者(何処かを襲う算段でもしているのだろうか……今の私には、止める術もないのか)

魔王(いくつか問題は残っているが何とかなるだろ)

魔王「兵を少し引き抜いておけ。それと船を出す準備を」

側近「船の方はすぐにでも手配出来ます。出兵の準備はすでに行われています」

魔王「何だ、今日中に出発できるのか」

女勇者(こんな状態で国に帰るのか……気が滅入る)


3.
船上

魔王「お前は一人で来たらしいが、船は一体何処に?」

女勇者「……あそこだ」

魔王「船なんて……まさかあの小さいのか?」

女勇者「ああ」

魔王(何時の時代の個人漁船だ)

魔王「漁師に船を出してもらえなかったのか?」

女勇者「魔物だらけの海域で、そんな助力をしてくれる者などいないさ」

魔王(今時、勇者への助力より身の安全なのか。道理でこちらに人が来ない訳だ)

女勇者「でも魔王がここにいるんだ。今は海上で臆する事は無いんだな」

魔王「まあ、うん、臆する事は無いな」

魔王「やっとだが無事に人間の大陸だ」

女勇者「何が無事だ!あんな巨大な大海蛇見たこと無いぞ!なんで襲われるんだ!」

魔王「管轄外というものだ。船体もこちらも無傷だ。何も問題あるまい」

女勇者「お前、仲間を殺したんだぞ?いや……それよりも、海が割れたぞ」ガタガタ

魔王「言うほど割れとらんよ。ま、これで適う訳も無い事が分かったろう。
   無駄な事をして命を捨てるなよ」

女勇者「……寝首をかいた位で死ぬのか?」

魔王「よほどの事でもない限りは」

女勇者「おかしいよな、死なないとか卑怯すぎるよ……この魔王」


魔王「手筈通りそちらは上手くやってくれ」ボソボソ

兵士「護衛の方は?」ボソボソ

魔王「そちらの方が人員必要だろ。いざとなったら撤退しろ。船もお前らもタダではない」ボソボソ

兵士「畏まりました。どうかご無事で」ボソボソ

魔王「よし、お前達はこの周辺で自由にしていろ。くれぐれも略奪をし過ぎないように!」

兵士達「「了解!!」」

女勇者(彼らを止め……られるわけがないか)


4.
魔王「随分と活気のある港町だな」

女勇者「漁業が盛んだからな。ここの国の貿易の要でもあるんだ」

魔王「ここから海を渡ったのか?」

女勇者「そうだが?」

魔王「これだけ人がいるのに、お前に手を貸したものはいなかったという訳か」

魔王「酷いものだな。お前はそんな人間達を本当に守りたいのか?」

女勇者「全てが善人だなんて思わないし、戦う力が無い人から見たら、自然な対応だ」

女勇者「それに、私は勇者だ。勇者が人々を守らず誰が守るんだ」

魔王(勇者、か。俺には呪いの様な足枷に見えるがな)

魔王「港町として歴史を築いただけはある。素晴らしい魚介料理だった」

女勇者「お前は何がしたいんだ。観光して料理をたらふく食って、とても魔王には見えない」

魔王「食とは生命活動の一端であり最高の娯楽よ。そうは思わないか?」

女勇者「それは……まあ、食事は楽しみだけど」

魔王「ならばお前は損をしている。あれほどの料理を、不満そうに食べていたのではな」

女勇者「私が聞きたいのはそんなんじゃなくて……」

魔王「奴隷云々の話であろう」

女勇者「……」コクン

魔王「暇を持て余している、と言っただろう。それにお前は俺自身の力も知っている」

魔王「人間では勝つことの出来ない差を。言ってしまえば、奴隷宣言などしなくても構わない」

魔王「この街での事も、お前の事も娯楽に過ぎんのだよ」

女勇者「つまり……私は観光に付き合わされていると」

魔王「どうとでも捉えるがいい。この大陸の国を落とすなど容易い事なのだからな」


5.
魔王「実り溢るる海の幸と、今日までのこの食の文化に、乾杯っ」

女勇者「こんな訳分かんない乾杯初めてだ」

魔王「良いではないか、良いではないか」モグモグ

女勇者「しかも既に三泊目」

魔王「良いではないか、良いではないか」グビグビ

女勇者「魔物の所為で沖まで漁が出来ないから、魚の種類が多いわけじゃないし」

魔王「美味いからいいんだ。うむ、美味いのだから、いいんだ……」


6.
魔物の間を縫うように駆ける魔王。
魔王とすれ違った魔物達は血飛沫をあげて崩れていった。

女勇者「何とか剣を振っているのが見える程度か……」

魔王「それが見えるだけでも大した物だ。ここらの魔物は、やたらと野生動物に近い姿だな」

女勇者「そういうものじゃないのか……?いや、そもそも何でお前が襲われるんだ!」

魔王「下級の者など知らんよ」

魔王(とは言え、野生の直感で感じるものくらいあるとは思うのだが……)

魔王「……何をやっているんだ?」

女勇者「何って、売れそうな部位を剥いでいるに決まっているじゃないか」

魔王「え……?」

女勇者「国から補助がある訳じゃないんだ。こうでもしないと旅なんか続けられないよ」

魔王「おお、滑る様な手捌き。何てワイルドな生活を続けてきたんだ」

女勇者「~♪~♪」

魔王(……年端も行かぬ女が鼻歌交じりに魔物を解体する図は微笑めない)

女勇者「よ~し、こんなもんでいいかな」

魔王「頬に血が付いているぞ」

女勇者「え?ん……別に自分で拭くからいいのに」

魔王「……見てて居た堪れない」

女勇者「??」


7.
魔王「さあ、晩餐だ」

女勇者「野宿なのに、こんな豪華な鍋が食えるとは」

魔王「ここらはいい野草が生えている。おまけに草食動物も多いときたもんだ」

女勇者「まさか魔王の手料理等食うことになるとは」

魔王「そうか……嫌か。いらないのか、残念だ」

女勇者「こんないい香り嗅いだら、断れないの分かっててそういう事言うんだよな」

魔王「食事の時は無礼講だ。あまり邪険にしてくれるな」

女勇者「……美味しい」

魔王「こういう生活が長かったからな。量はあるのだ、遠慮するなよ」

魔王「普通の町だな」

女勇者「特産も何も無いが静かで言い町だ。そういった町もお前達の所為で減っているが」

魔王「そうだな……食に通じる特産のある町なら守りさえもしてやろう」

女勇者「色々と駄目だな、この魔王」


女勇者「……」ジーッ

魔王「何を凝視しているんだ」

女勇者「いや、魔王なのに装飾とか無いよな、と思って」

魔王「鎧に装飾などいらん。機能性重視でよかろう」

女勇者「威厳というか、そういうのは考えないのか?」

魔王「力さえあれば認められはする。人柄が良ければ受け入れられる。それだけの話だ」

女勇者「話は分かるが、見た目青年で若干貫禄不足なんだよなお前。
    ああ、だから誰も魔王だと気づかないのか……」

魔王「……」


8.
女勇者「……」

魔王(随分と荒れ果てた村だな)

女勇者「お前はこれを見て何も思わないのか?」

魔王(魔物に襲撃されたのか)

魔王「強者がいて弱者がいるなら、こうなる事も珍しい事ではなかろう」

女勇者「……できるなら今ここで、お前の首を切り落としてやりたいよ」

魔王「適わぬ願いだな」


魔王「そうだこんな事は珍しくは無い……我ながら反吐の出る台詞だ」


9.
女勇者「そういえばお前って魔法使わないけど、どんなのが使えるんだ?」

魔王「魔力はあるが、魔法そのものは使えんよ」

女勇者「えっ?魔王なのに?」

魔王「一言で言うなら育ちが悪かった」

女勇者「魔法ってそういうものなの?」

魔王「ああ、お陰で身体能力の向上や、武具に具現化させる事に関しては長けている」

女勇者「魔力の剣とか魔力の鎧って凄いの……?」

魔王「鎧は試した事は無いが、剣ならば使い方次第で灼熱のような熱気で焼き払う事もできる」

女勇者「どう足掻いても倒せないのだろう、から戦うまいという思いに変わったよ」


10.
女勇者「……」

魔王「……」

女勇者「日……昇ったね」

魔王「ああ、光溢るる世界の始まりだ」


女勇者「日……沈んだね」

魔王「ああ、夜の帳が下りてきたな」

女勇者「あーもーお前が毒茸でっ!鍋などしなければっ!寝て過ごす一日などっ!!」

魔王「大陸が違うと同じ種でも毒性を持つのか、勉強になったな」

女勇者「黙れ!」


魔王「ここまで無事だった事と、この先の旅の安全を願って、乾杯っ」

女勇者「……お前は町で夕食を食べる度に乾杯をするな」

魔王「おかしいか?」

女勇者「普通ではないな」

魔王「そうか……昔はあまり誰かと食事をするという事は無かったからな。
   ついつい杯を鳴らしたくなるのだ」

女勇者(結構寂しがりやなのかな……こいつ)


11.
女勇者「あ……」

魔王「あの子供、石を投げつけられてるが、罪でも犯したのか?」

女勇者「彼は魔物と心を通わす事が出来るんだ」

魔王「人の言う『魔物の子』か……今の人の世は歪んでいるな」

少年「……」トボトボ

魔王「少年、人が憎くはないか?」

女勇者「ちょ、何を……」

魔王「自然にできてしまう事なのに、迷惑をかけているわけでないのに、虐げられる怒りはないか?」

少年「自分が、おかしいから……」

少年「できないはずができてしまうから……異常だからこれは、当然の事なんだと思う」

女勇者「……」

魔王「……こいつをお前にくれてやろう」

少年「短剣?」

魔王「お前が信じるように使えばいい。俺は焚きつけもしないし助言もしない。自分で道を見つけろ」

少年「ありが、とう……」


女勇者「何故あんな事を」

魔王「身の振り方を決める選択肢を与えただけだ。最もあの様子なら他者の為に振るうだろう」

魔王「皮肉だが、歪みの狭間に立たされる事で、正しき高さから世界を見つめられる者は生まれる」

魔王「まあ、更に歪んで滅亡を手繰り寄せる者が生まれるのも事実だがな」


12.
魔王「うめぇ!」

女勇者「何時見ても晴れ晴れとした食いっぷり」

魔王「我々もお前らと同じ雑食だから同じように食える。
   が、味付けが全く違うから、毎日が新鮮で楽しいぞ」

女勇者「まあ、こちらの国々でも味付けは違うしな。
    でも、時々慣れ親しんだ味が恋しくならないか?」

魔王「向こうの調味料ならほれ、ここに」

女勇者「今、私の中に在る魔王の厳格さが砕け散った」


女勇者「おやすみ」

魔王「うむ」

女勇者「……」スースー

魔王「……」

鳥「……」

魔王「何だ伝書か?どれどれ」

魔王「山岳か……だいぶ時間がかかるな」

魔王「こいつは……胃が痛くなる話だな。焚き火にくべてやろう」

鳥「……」

魔王「おっと忘れていた。ほれ、駄賃の干し肉だ」

鳥「」バサバサ

魔王「っは、返す伝書をくくり忘れた」


59:UbDtwsi8O
マイ調味料持参とは流石だな



13.
魔王「城下町故にか、この書物の量は」

女勇者「学者が多い国なのも理由だけどさ」

魔王「む、この本は?」

女勇者「あーそれ私も読んだなぁ。変わった姿の魔物が描かれているんだけど」

女勇者「お前の近くにはこういう魔物が普通なのか?」

魔王「まあ……似たようなものだな」

女勇者「釈然としない答えだな」

魔王(確かに魔物が描かれているが、本というより手記のような……?)


魔王「人々の更なる知の発展を願って、乾杯っ!」

女勇者「乾杯っ!ああ、魔王と乾杯する事になれてしまった自分がいる……」

魔王「食事の時くらいそのような……」

女勇者「……どうかした?」

魔王「……美味いものではないな」

女勇者「珍しく辛口……でもないな、これは」

魔王「何でだ?これだけ発展してて、ハズレを引いたにしても酷すぎる」

女勇者「学者肌だと研究以外の事は疎かにするものらしいからね」

魔王「分からんでもないが……くそ、食の発展を願うべきだったか」


女勇者「やっぱりお前も変身とかするのか?」

魔王「いきなりどうした、魔法は使えないと言っただろ」

女勇者「大将格の魔物とかって倒したと思ったら、変身して再度戦闘になるのってよくあるんだよ」

魔王「そういう意味か。それなら一応は変身できる。正確には本来の姿だが」

女勇者「……強い?」

魔王「本来の姿だからな。今の状態で挑んだら、ジャブだけで頭が吹き飛ぶだろう」

女勇者「戦うまい、から敵対しまいという決意に変わったよ」


14.
戦士「ゆ、勇者!」

女勇者「え……あ!」

僧侶「ああ……良かった、思いとどまってくださったんですね!」

女勇者「……っ」

魔王(知り合い……にしては様子が変だな)

戦士「あの時の事は申し訳ないとは思っている。だが、海を越えるなんて無理な話なんだ!」

魔王(無理難題に仲違いをしたといった所か)


僧侶「あの……そちらの方は?」

魔王(振るなよ、言い訳考えとらんよ)

女勇者「こ、この人、は……」

魔王「こいつの主だ」

戦士「あ、主……?」

魔王「賊に捕まって身売りされたのさ。それを俺が買い取った。それだけの話だ」

女勇者「……」

僧侶「そんな!」

戦士「人身売買だと、この外道が!」

魔王「何とでも言え。
   お前らが俺を悪とするなら、お前らの正義で俺の手からこいつを奪って見せるんだな」

戦士「……」ギリ


15.
魔王「ふう……流石に焦ったぞ」

女勇者「何であんな事を言ったんだ?」

魔王「はぐらかそうかとも思ったが、お前としても仲間の意思確認をしたいだろう」

魔王「夜襲の一つ行うかはどうかは彼ら次第だがな」

魔王(今の時代を見るとどうなるかは、想像に難くないが……)


魔王「町を出たが、追いかけて来る様子も無し、か」

魔王「仲間を取り戻したいと思わんのか、それとも恐れが先か我が身が先か」

女勇者「……」

魔王(しまった、不味い独り言を……)

魔王「……泣いて、いるのか?」

女勇者「……分かっていた」

女勇者「世界を守るとか、そんな綺麗ごとで自分を犠牲にして、重荷を背負えない事ぐらい」

女勇者「それでも……仲間くらい、信じて……」

魔王(それでもお前は、勇者というだけで民の命運を背負い、守っていくのか)


16.
魔王「エルフの村か……初めて見るな」

女勇者「それはいいが……魔王のお前が来て大丈夫だろうか」

魔王「面割れてないからな」

女勇者「魔王としてそれはどうなんだろ……」

魔王「気になっていたのだが、
   お前はどうして顔すら知らない魔王が海の向こうにいると思ったんだ?」

女勇者「大陸は一通り旅したけども、それらしい根城が見つからなかったからな」

魔王「一通り?……ここら辺も行ったのか」

女勇者「山岳地帯は行ってないよ。道中が厳しすぎると仲間に反対されたんだ」

魔王(でも海は一人で渡ったと。努力の方向間違えすぎだろ)


魔王「エルフの村というだけあって、精進料理がメインか」パク

魔王「これはこれで良し!」

女勇者「昼間の話なんだが、あの山岳地帯になにがあるんだ」

魔王「山岳……?ああ、えーとだな、何と言えばいいか」

魔王「拠点みたいなものだな」

女勇者「向こうの大陸にあった国も拠点の一つなのか?」

魔王「あそこが正式な国。わざわざ何度も海を越えて出兵できんよ」

女勇者「……その拠点にも行くのか?」

魔王「抜き打ち視察には丁度いいな。たるんでる所を、絞れるだけ絞ってやろう」


魔王「さあ、夕餉の時間だ」

女勇者「うっわ、すっごい良い香りの鍋だ」

魔王「今日のは手間がかかっているからな」

女勇者「いただきま~す。……何か、臭みがあるような」

魔王「今日狩ったものだからな。悪いが我慢してくれ」

女勇者「ふ~ん……え?何の肉?」

魔王「……」

女勇者「待って、ちょっと待って!今日戦った魔物でまともに食えそうなのって」

魔王「なに、たかがヒグマよ」

女勇者「違、あれは、ひ、人喰い熊っ……お前は、何て物をっ!」

魔王「それでも箸を進めるお前の図太さが大好きだ」


81:9j01RucI0
さりげない告白に惚れた



17.
女勇者「ああ……嫌だ。行きたくない」

魔王「城下町が見えているんだが、野宿したいのか」

女勇者「何処かでお前は魔王軍の気の良い兵士なんじゃないか、て期待した私が馬鹿だった」

女勇者「やっぱり悪魔だ、魔王だ。こんな状態で帰国だなんて、屈辱もいいところだ」

女勇者「楽しいか、嬉しいか、この外道め!」

魔王(何という酷い言われよう)


女勇者「……はぁ」

魔王「開き直れ。何度目の溜息だ。ほれ、人が見てるぞ」

女勇者「……はぁ」

魔王「飽くまで新しい仲間と一時帰国という事にしていればいいだろう」

女勇者「……妙に優しいな」

魔王「そんな調子ではこちらも滅入るのだ」


女勇者「……死にたい」

魔王「人の噂も何とやら、元気を出せ」

女勇者「……何で奴隷として買われた事が広まってるんだよ」

魔王「すまん、いくら賑やかとは言え、街中で言うにはまずい嘘だった」

女勇者「……あながち嘘じゃないけどさ、でもさ、はあ……」

魔王「……今日中にここまで行けたら、今晩は買っておいた高級牛ですき焼きでもするか」

女勇者「心機一転、頑張って旅するぞ!」

魔王「食べ物一つでこれはあんまりだが、その現金さも大好きだ」


18.
魔王「この草を日干しした物を半分程度を加え、よく混ぜれば完成だ」

女勇者「まさか魔王から野草から薬の作り方を教わるとは……」

魔王「旅先では重宝するからな」

女勇者「しかも分量が結構いい加減」

魔王「そこまで効果が大きく無い。多少過剰投与した所で副作用など出んよ」

魔王「ちなみに、水を吸うとそれはもう物が持てなくなる程にぬめりを帯びる」

女勇者「……漏れたら一大事な傷薬ってどうなんだろう」


女勇者「ここが……魔王軍の拠点であり、こちらの大陸の諸悪の根源」

魔王「海なんぞ渡らなければ、割かしすぐだったものを」

女勇者「そんな事より、ここにいるのは幹部とも言える部下なんだよね」

魔王「それがどうかしたか?」

女勇者(魔物達が魔王を前にした時の反応が見れるのか)

女勇者「超楽しみっ」

魔王「待て、いきなり何だ?変なものでも食ったのか?」


19.
女勇者「超つまんないっ」

魔王「今度は何だ……どんな食あたりだ?」

女勇者「何で、拠点の魔物もお前を攻撃しているんだよ」

魔王「実に絞りがいのある話だ」

女勇者「……皆殺しなのに絞るも何もないよな」


魔物の王「フハハハハ!人間如きがよくここまで来たな!」

女勇者「あれが魔王の幹部か……へんてこな鳥顔だなぁ」

魔物の王「幹部だと?ふざけた事を!この私こそが魔王だ!」

女勇者「え……?ええ?魔王?!」

魔物の王「たかが人間二人とは甘く見られたものだな!矮小な存在でこの私を倒せるとでも?!」

女勇者「ちょっと待って、考える時間を……」

魔物の王「そこの男も王たる者と対峙した恐怖に、声も出ないようだな!」

魔王「……」

魔物の王「見せしめに消し炭にしてくれよう!火炎魔法!」

魔王「ん?ちょ、アチ!」

魔物の王「?!」

女勇者「……」

魔物の王「耐性装備か!ならば、爆裂魔法!」

魔王「いてっ!」

魔物の王「ぬぬぬぬ!これならどうだぁ!」

魔物の王が両手をかざすと、天井が闇に包まれ巨大な球体を吐き出した。
魔王は片手で振り払うと、球体は砕け黒い霧へと変わり霧散した。

魔物の王「……」ポカーン

女勇者「……」ポカーン


20.
魔王「魔王と言っても、所詮は魔物の王か……がっかりだ」

魔物の王「お、お前は何者だ!人間ではないな!」

魔王「……そうだな、いい加減ネタばらししてもいいだろう」

魔王「そう、人間ではない。我こそは魔王だ」

魔物の王「な、何をふざけた事を!私こそが魔王である!」

魔王「おっと失礼、正確には魔王の一人だ」

魔王「この世界には二つの大きな大陸がある」

魔王「ここと、そして北にもう一つ大陸が広がっている」

魔王「北の大陸に人間はいない、魔物と魔族が暮らす世界」

魔王「そしてその世界では、こちらの大陸で言う魔王は存在しない」

魔王「北の大陸では国を統治する者を魔王と呼ぶ。こちらの世界での国王と同じ存在だ」

魔王「いくつもの国がある。俺はその中の一つの国の王、魔王の一人なのだよ」

女勇者「……」

魔物の王「……」

魔王「……?」

魔物の王「クッククク、クハーハッハッハッハ!何が国の王だ!」

魔物の王「異常なほどの魔法の耐性ではあるが、それがとんだ妄想癖とは!」

女勇者「もう何が何やら……どっからが冗談?いや、もっと噛み砕く方を宜しく」

魔王「お前……まあいい。魔物の王よ、先祖代々お前達による過失、きっちりと清算してもらおうか」

魔物の王「え……?」


21.
魔王「極一部の国は、この大陸を攻めたがっているが」

魔王「我が国を含め他の国々は、人間との共存を目指している」

魔王「何百年もかけて少しずつ征服派を共存派にしていっているのだ」

魔王「だというのに、こちらの大陸に現れるお前達魔物の王はあろう事か」

魔王「魔王=悪の図式をこれでもかと根付かせている」

魔王「共存へはまだ、初めの一歩すらも踏めていないというのにだ」

魔王「許さん、許してなるものか……魔物の王よ!」

女勇者「じゃあ、本当は私達の味方だったの?」

魔王「あの時、罪人とは言え、初めて来訪した人間を保護するつもりだったんだ」

魔王「お陰でこの大陸に這う不穏分子の情報を得られた訳だがな」

女勇者「じゃあ北からこっちにも来る人っていなかったの?」

魔王「征服派を抑える為にも、彼ら含め共存派も全てこちらの大陸への渡来は禁じられているのさ」

魔王「お陰で事が終われば、そこの愚か者の首を手土産に、各国に平謝りをしに行く事になった」

魔王「さて、お喋りが過ぎたな。せっかくの大将戦だ。久々に全力で行くぞ!」

全身を強張らせる魔王。
すると、突如巨大な翼が背を突き破り、額と耳の後ろからの鋭利な角が突き出た。

魔王「オオオオオオオオオオ!!」

大きく仰け反り、大気を震撼させる咆哮が城内を揺るがした。

女勇者は目を見開いて驚いている。
魔物の王は恐怖に身を竦ませている。


137:THlOYCMj0
本気出さなくても勝てそうだけどなw



21.
魔王「どうした?まだ姿が少し変わっただけだぞ」

何も持っていない両手で、ゆっくりと剣を引き抜く動きをする魔王。

すると左手から剣が出ているかのように、黒塗りの刀身が姿を現した。

女勇者「これが魔力の剣……」

魔王が抜ききった剣を高々と振り上げると、剣先にある天井が歪んで見えた。

女勇者「熱気が……これが魔力の剣」


142:4ybYiPtE0
なぜ2回言った

141:+SbDpJ1X0
大事なことなので(ry

143:Gjswm+NOO
同じ事二回言ったw

145:arcGxkFBO
それだけびっくりってことだよなw



22.
魔王「どうした?まだ姿が少し変わっただけだぞ」

何も持っていない両手で、ゆっくりと剣を引き抜く動きをする魔王。
すると左手から剣が出ているかのように、黒塗りの刀身が姿を現した。
魔王が抜ききった剣を高々と振り上げると、剣先にある天井が歪んで見えた。

女勇者「熱気が……これが魔力の剣」

魔物の王「あばばばばばばば」

魔王「……本当にがっかりだな」

魔王「そうそう思い出す事もあるまい。歴史の塵に消えろ矮小な存在め」

魔物の王「ひぃぃぃぃ、待て、せ、世界をはんb、九割をくれてやる!」

魔王「……」

魔物の王「……へ?」

魔王「よし、待った」

魔物の王「……え?」


150:4ybYiPtE0
合計3回いいました



23.
魔王「ううむ、城が崩れていくな」

女勇者「それ以前に回りの山が抉れているんだけど」

魔王「加減したんだぞ。いや本当に」

女勇者「何か口調も砕けているんだけど」

魔王「王らしく喋るのって面倒だよな」

女勇者「今までの全部演技なの?」

魔王「先代とは武力交代だったからな。王としての教養などないのさ」


女勇者の祖国

魔王「祭り騒ぎだな」

女勇者「急に魔物の姿が消えて、平和が来た事に気づいたんだから当然だよ」

魔王「……今日の晩餐を御相伴して終わりだな、この旅も」

女勇者「もう帰るのか……?」

魔王「この大陸にいる事自体が重大な規定違反だからな。これからしばらくは胃が痛そうだ」

魔王「だから今晩を存分に楽しむぞ」

女勇者「そう、だね」


24.
女勇者「いろいろと話して欲しいんだけど」

魔王「例えば?」

女勇者「さっきの話は信じるとして、どうにも王らしく見えないんだよな」

魔王「武力交代と言っただろ。まあ、正面から殴りこんで先代と一騎打ちして首跳ねて」

魔王「疲れたからその場で寝て、朝起きてみたら魔王様ご就任おめでとうございます、だ」

女勇者「周りは納得してたんだ」

魔王「と、いうより結構な圧政を行っていたんだ。それも魔王の武力による恐怖政治だ」

女勇者「もしかして殴りこんだ理由って……」

魔王「他にもあるがな……まあ、そんな訳で、教養の欠片も無い俺が王となってしまったのさ」

女勇者「何で共存派とかあるの?魔王達もこちらには来れないんでしょ?」

魔王「はるか昔は派閥も無く、ちょくちょくこちらには来ていたそうだ。
   その頃は攻めるに足らないと思われていたんだろう」

女勇者「ふーん……お前は何で共存派に?」

魔王「正直ぶっちゃければ別に共存しなくてもいい。だが、手を取り合える関係なら尚良しって所だ」

魔王「まあ……不必要な侵略や略奪を無くしたいというのものあるな」

女勇者「……なんだ、本当に立派な王様じゃないか、お前は」

魔王「食うために殺す。本当に弱肉強食の世界で育っただけだ」

魔王「無意味な殺しに違和感を覚えているだけだ。ただのエゴさ」

女勇者「でもさ、何で敵対している魔王の様な素振りを見せたの?」

魔王「大々的に人と手を組むマネをしたくなかったのがある。
   侵略派が変な勘違いを起こしたら不味いからな」

女勇者「だったらこっちに渡ったら、全てを話してくれても良かったじゃないか」

魔王「たまには悪役を演じてみるのもいいかな、と。まあ、話がややこしくなりそうでもあったしな」

女勇者「全く、今のお前ならもっと旅を楽しめたものを」

魔王「いや、結構楽しんでいただろ?」

女勇者「……そうだね、奴隷のはずなのにね」

魔王「何のはな……全く以ってそうだな」

女勇者「明らか忘れていたのに、演じてた時の口調で取り繕うなよ」


25.
女勇者「他は……魔物の姿ってこっちと向こうじゃ違うんだよね?」

魔王「城下町で見た図鑑があっただろう。あれに載っているようなのが、我々の言う魔物なのだ」

女勇者「結構変なへなちょこりんなのが多いよね。でも、だとしたらあの本は誰が書いたんだろう」

魔王「言い方を慎め。あれに載っていたのは海岸近辺に生息する物が多かったからな。
   大方人間が漂流して辿り着いたのだろう」

魔王「だが、そんな文献は見た覚えが無い。あの大陸に来た人間の経緯といい、
   何度も現れる魔物の王の事といい、調べる事が山積する一方だ」

女勇者「お疲れ様。それにしても、絵自体は上手くなかったからなぁ。そっちの魔物を見てみたいよ」

魔王「……」


魔王「この旅の間考えていた」

女勇者「うん?」

魔王「……今の人の世は乱れている。この平和も長続きはしまい。
   すぐにも人同士の争いが始まるだろう」

魔王「お前が望むなら連れて行くぞ。皆、快く受け入れてくれるだろう」

女勇者「……」

魔王「どう、だろうか?」

女勇者「……ありがとう。でも私はここに残るよ」

女勇者「確かにいい世の中だとは思わない。けど、それを良くしていくのも勇者の勤めだと思うんだ」

魔王「そうか……お前が生きている間に、共存を実現させたいが」

女勇者「もう何百年もかけて進めていないんでしょ?」

魔王「ああ、無理だな。そもそも今の人間達では、うまく手を取り合えないだろう」

女勇者「だね。だからこうしていられのもこれが最後なんだね……」

魔王「手助けが欲しければ、何時でも頼ってくれ。遣いの鳥もお前に預けよう」

女勇者「……いいの?」

魔王「人が来るのは問題ない。後はお前が望むのであれば、な」

女勇者「そう……それじゃあ、何時かまた航海できれば行くね」

魔王「……個人的に残念な結果ではあるが、そろそろ最後の晩餐といこうか」

女勇者「そうは食べれない高級な食材とかも多いから楽しみだったよ」

魔王「そりゃあいい、この旅の終わりを締めくくるには最高の一夜だ」

女勇者「本当に食べてばっかだね。それじゃあ……私達の更なる活躍と」

魔王「一日でも早い人と魔族が手を取り合える未来を願いまして」

女勇者・魔王「「乾杯っ!」」



 奴隷商「さあさあ、本日の目玉だよ!」 終


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