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2010-06-28

横島忠夫「都市伝説…っすか?」

1 :名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/06/26(土)
おキヌ「何ですか?都市伝説って」

美神「簡単に言っちゃえば噂話ね」

おキヌ「噂話?」

頭に?マークを浮かべたおキヌに美神が簡単な説明をする

美神「そんな事柄は存在しないのにまことしやかに囁かれる噂話
   聞いた事あるでしょ?口裂け女とかトイレの花子さんとか」

おキヌ「あー!あります!」

ポンっとおキヌが手を鳴らす

横島「…で?何で俺に見鬼くんを…?」

横島の手には霊力を感知する人形型の霊気センサー「見鬼くん」が持たされていた

美神「それがねぇ…どうも最近その都市伝説の目撃例が多く挙がってるのよねぇ」

ウンウンと頷きながら美神が言う

横島「……」

横島の背中にヒヤリとしたものが走る

美神「ただの噂だとは思うんだけど…正式な依頼がきちゃって」

横島「な…なら美神さんが行ってくださいよ!!!」

美神「噂話ごときで私が出るなんてバカらしいでしょ!大した額の依頼でもないのに!」

横島「それ後者が主な理由じゃないっすかー!!!!」

美神「何よ!アンタもそろそろ一人で依頼くらいこなせるでしょ!!!」

横島「覚えてないんすか!モガちゃんの事!!!」

それは過去にあった事件
モガちゃんと呼ばれる人形に魂が宿り
自分を捨てた人間に復讐しようとした事件である

横島「あれなんか『メリーさん』そっくりじゃないっすかー!!!」

おキヌ「メリーさん?」


2.
またも首をかしげるおキヌに横島がグルリと向き直る

横島「ある女の子がメリーさんと名付けた人形を持っていたんだ…」

おキヌ「ひぃ!いきなり雰囲気出して話すのやめてくださいぃ~!」

低い声のまま横島が続ける

横島「その子は人形を大切にしていたしとても可愛がっていた
   けれど大きくなるにつれ…次第に人形遊びをしなくなり…」

   そして捨てた」

おキヌがゴクリと唾を飲む

横島「そんなある日女の子…いや大きくなったOLの…そう、ミニのタイトスカートが似合う…」

美神「脱線してんじゃないわよ」

呆れ顔の美神が突っ込む


横島「ゴホン、まぁその子の元に電話がかかってくるんだ…

  『もしもし、私メリー、今駅前にいるの』それだけ告げて電話は切れる」

横島「その子は悪戯電話かと思ってた…けれどしばらくするとまた電話が鳴る…

  『もしもし、私メリー、今公園にいるの』そしてまた電話は切れる」

横島「その子もさすがに気持ち悪くなってくる…けれど電話はまだ続く…

  『もしもし、私メリー、今大きな橋を渡ってるの』

  『もしもし、私メリー、今学校を通りすぎたわ』
   
   それはどんどん近付いているのが分かった」

おキヌ「ひいぃん」

おキヌが泣きそうな声を上げる

横島「『もしもし、私メリー、今あなたのマンションの前』

   『もしもし、私メリー、今あなたの部屋の…前』」

横島「そしてまた電話が鳴る……プルルルルル…プルルルルル…
   その子はもう電話と取る勇気がなかったんだ…
   電話は取らなかった…でもその声はしたんだ……女の子のすぐ後ろから」


横島「一枚足りな~~~~~~い!!!!!!!」

おキヌ「ひやぁああぁああああ!!!!!!!!」

美神「オチを盛大に間違っとるやないかい!!!!!!」

ガツンと美神が横島の頭を殴る

横島「あいたー!!!!」

美神「おキヌちゃんも!そんな脈絡の無いオチで怖がらない!!」

おキヌ「だってぇええ!!」

フゥとため息をついて美神が続ける

美神「今のオチは『私メリー、あなたのすぐ後ろにいるの』って声がするの
   それで女の子は行方不明になっておしまい…って話よ」

横島「ね?モガちゃんの時と似てるでしょ?」

美神「そう?」

横島「つー事はですよ!最近の目撃例ってのも…実際に…」

おキヌ「や…やめてくださいぃいい!!」

美神「幽霊のたぐいなんて見慣れてるでしょうが」

横島「そ…それはそうですけど…怖いじゃないっすかー!」

美神「大丈夫よ、ただの噂、それでおしまい」

話は終わり、とばかりに手をヒラヒラと振る
そのまま横島は部屋を出される

横島「鬼ー!悪魔ー!!!俺が口裂け女に食われたら化けて出てやるからなーー!!!」


3.
おキヌ「ほ…本当によかったんですか?横島さんに任せて」

美神「いいのよ、アイツももう一人前なんだから」

おキヌ「信頼してるんですね?」

美神「ち!違うわよ!!安い報酬で動くのがバカらしいだけって言ってるでしょ!!」

言いながら美神がゴソゴソと何かを取り出す

美神「はい、どうせ止めても行くんでしょ?」

おキヌ「え!?」

その手には破魔札と精霊石が握られていた

美神「無駄遣いは横島クンの給料から引くからね」

夜も更け
暗闇と静寂の中、横島は一人歩く
手にはカタカタと反応しているのかいないのか分からない見鬼くんが持たれていた

横島「こえぇええ…そもそも都市伝説の目撃例って……どの都市伝説が…」

街灯すら無い道をトボトボと歩く
近くにいるのかフクロウの鳴き声が時折響く

横島「もし口裂け女が出てきたら……ぽ…ポマードが苦手なんだっけか」

涙目になりながらいつか聞いたことのある都市伝説を思い出す

その時ふいに手元の見鬼くんが反応を示す

横島「うぉおお!!!な!!なんじゃー!!どこじゃー!!!」

ワタワタと取り乱しながら周りを見渡す

横島「…あ」

横島の視線の先、50m程だろうか
そこに今までなかった街灯がポツンと一つだけ存在していた

横島「逃げたい…叫んで逃げ出したい…」

そしてその街灯の下には『誰か』がジッと下を向いて立ってた

ジクジクと涙を流しながらゆっくり近づく
近付くにつれ、その『誰か』は赤いワンピースを着た女性である事が分かる

横島「ぜ…全然…欲情せん…」

見鬼くんを腋に抱え、手のひらに霊気を集中させる

横島「どうすりゃいいんだ…倒すのか…?逃げるのか…?」

横島の手の中に文珠が生成される
だがそれに浮かべる文字はまだ決まっていなかった


4.
赤いワンピースの女に近づく
その距離はもう手を伸ばせば届く程になっていた
その女の膝から下は無く、女が霊体である事は明白だった

女「…ない」

唐突にその女が口を開く
街灯の下にもかかわらず女の顔には影がかかっているようにハッキリしない

横島「…な…何が…?」

平静を装いながら横島が尋ねる

女「…靴」

横島「分かった!靴だな!それを見つければ……!」

そこまで言って横島が静止する
その視線は女のワンピースに注がれていた

横島「見つけ…れば…」

赤いワンピースと思っていた
女が着ているのは赤いワンピースなんだと

横島「…」

ゆっくりとその女が横島の方に顔を向ける
表情の分からないその顔はワンピース同様に赤に染まっていた

横島「美神さぁあぁあぁぁああああん!!!!!!」

涙と鼻水を大量に噴射しながら駆け出す
いつの間にかピクリとも反応のない見鬼くんを抱えたまま

横島「文珠!!文珠!!!」

女に背を向けて走りながら文珠に霊気を込める…
…が、文珠にはまるで反応が無い

横島「なんでぇぇえええ!!!!」

霊力が切れた時と同じ感覚が横島を襲う

横島「なんでだぁあああ!!ついさっきまで文珠出たのにぃいいい!!!」

そう叫んだ横島の目に信じられない光景が飛びこむ

横島「嘘だろ…」

向かう視線の先50m
そこには一つの街灯と、下を向いて立つワンピースの女がいた

横島「は…」

恐る恐る振り返ると
やはりその先にはワンピースの女がいるのが確認できた


5.
おキヌ「よよよよよ横島さんが!!きききえきえ」

慌てふためくおキヌを宥めながら美神が口を開く

美神「どうしたの、落ち着いて!横島クンがどうしたって?」

おキヌ「消えちゃったんです!!声をかけようとしたら急に!!!」

それを聞いて美神も表情を変える

美神「話して、詳しく!都市伝説の調査ね?」

おキヌ「は…はいぃい」

おキヌは起こった事を話し出す

おキヌがそれを見たのは十分程前の事だった
美神に渡された破魔札と精霊石を持って横島の後を追う
二人きりの調査だ、怖いより楽しみな気持ちのほうが勝っていた

おキヌ「あ、いた!横島さん!横島さーん!」

声をかける直前に彼の手の中の見鬼くんが反応してたように見えた
そして彼自身もどこか取り乱しているように

おキヌ「よこっ…!」

次の瞬間、彼は消えた、忽然と
街灯の無い暗い道だが彼を見間違える程薄情ではない

美神「それですぐ引き返してきたのね?」

おキヌ「はい…」

美神「正解よ、変に巻き込まれなくてよかったわ」

おキヌ「美神さん…」

バタバタと霊視ゴーグルや神通棍を用意する

美神「ピートや厄珍に連絡を取ってから行動するわ
   一応あのイヤミ女にもね、何か知ってる事があるかもしれない」

電話を手に取り番号をプッシュする

美神「やっかいな事にならなきゃいいけど」


6.
女「靴…」

横島「はいはい、靴を探せばいーんすね!任せてください!男横島に!」

足をガクガクと震わせながらも強がる

横島「ところでその~…お姉さんは…何があってそうなったのかなー……なんて…」

女「……」

横島「あははー女性の過去を詮索するのはマナー違反ですよねー!!!ちくしょー!」

女「……」

そう言って元々は白だったと思われるワンピースに目を向ける

横島「どうすりゃこんな事になるんだよ…」

赤に染まったワンピースの所々から白の布地が見える
その赤はワンピースの裾からポタポタと滴り、足元に小さな水たまりを作っていた

横島「勘弁してくれよ…」

そう呟きながら辺りを見回す

横島「道はせいぜい50mでループするし…霊力は使えないし…
   脇にある林道か…民家の中って事は無いと思うんだが…
   クソっ!なんで俺がこんな事せにゃならんのだ!」

涙目で愚痴をこぼす

ガサガサと草をかき分け横の林道に入る
湿った空気が横島の不快感を増す

横島「あ、これか?」

目の前にボロボロになった長靴が落ちていた

横島「さすがにこれは無いか」

それをポイと投げ捨てる
中に水でも溜まっていたのかバチャと嫌な音を立てて転がる

横島「霊力の無い俺なんか一般人以下のエロガキなのに…なんでこんな…

   ひぃいいいいいいい!!!!!!」

愚痴を言いかけて盛大に悲鳴をあげる

横島「もう堪忍してぇ~!!!」

先ほど投げ捨てた長靴の中に溜まっていた液体
それは真っ赤な色をしていた
こぼれたその液体は地面を赤く染めていく

横島「こんな話は嫌だ!!!なんでジェットババアとかじゃねーんだよー!!!」

ガクガクと震えながらも探索を続ける


7.
草をかきわけ進むうちに
少し開けた場所に出る

横島「ここは…」

まるで植物が生える事を拒むように
そこはポッカリと地面がむき出しになっていた

横島「靴だ…」

そしてその場所には靴が二足転がっていた
赤と白、二色のパンプスが

横島「これはあれか…選択を間違えると…殺される的な…?」

女「どっち?」

横島「どぅわぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

突然、すぐ後ろから聞こえたワンピースの女の声に
横島が絶叫をあげる

女「どっち?」

横島「い!!いきなり来るんちゃうわー!!!」

闇の中でもその女の赤はよく目立った

女「…ど…っち?…」

横島「白か…赤なんかー!?頑張れー!横島ー!!ここが正念場やぞー!!
   主人公はこういう時に外れを引かん!そうできてるんじゃー!!!」

数分間頭を抱えて悩む

横島「白…ワンピースが元々白いんだ…白…だからこそ赤…ワンポイントに赤か…あぁ…
   そもそも足が無いのにどうやって靴なんか履くつもりなんだよコイツは…」

   だぁああぁあ!!分かるかーーー!!!」

そんな横島をせかすように声が響く

女「……どっち?」


8.
エミ「死ぬわよ」

美神令子のライバルでもある呪術師の小笠原エミはこともなげに言い放った

美神「死ぬって…」

エミ「都市伝説が爆発的に広がったのには理由があるワケ」

美神「何よ?」

エミ「あらー!天下の美神令子ともあろう者が」

美神「うっさいわね!!さっさと続けなさいよ!!」

エミの皮肉にイライラしながらも耐える

エミ「どの話にも『逃れる方法』が用意されてるワケ
   例えばポマードを投げつける、あ、これは口裂け女なワケ」

美神「分かってるわよ」

エミ「その『逃れ方』を知ってる奴は知らない奴より優位なワケ」

美神「…」

エミ「人間の心理ってヤツ?少しでも他人より優位に立ちたいって気持ち
   だから知ってる奴はその都市伝説を広めるワケ
  『逃れ方』だけを隠してね」

美神「『逃れ方』を知らない奴はなんとか知ろうと様々な場所でこの話をする」

エミ「そういう事」

電話の向こうでエミの嬉しそうな声がする

エミ「まぁこれは都市伝説が広まった理由ってだけなワケ、厳密にはもっと要因があるんだけど」

美神「…で?それと今回の案件の関係は?」

エミ「重要なのは『逃れる方法が実在する』って点なワケ
   これは逆に『その方法以外では逃れられない』って『ルール』が成立するワケ
   そのルールを破った者、方法を間違えた者の末路は…大抵の話では『死』」

美神「そうね」

ここまで聞いて美神も理解する

美神「都市伝説が具現化した理由は分からないけど…
   一度それに捕まると、ルールを守り条件を満たさない限り…」

エミ「…なワケ」

エミ「除霊が可能かも今の段階では分かんないワケ」

美神「でしょうね…霊力を制限されても不思議は無いもの」

その後、一言二言交わし電話を切る

おキヌ「美神さん…横島さん…大丈夫なんでしょうか…?」

真っ青になったおキヌが尋ねる

美神「あのゴキブリ以上の生命力を持った奴が簡単に死ぬわけないでしょ
   いつもみたいに『あー!死ぬかと思った』って言いながら帰ってくるわよ」

おキヌに向かいニコっと微笑む


9.
横島「あ゛ーーーー!!!死ぬかと思った!!!!」

事務所の扉を開けてゼェゼェと息を切らせた横島が飛び込んでくる

美神「あら、早かったのね」

おキヌ「横島さん!無事だったんですね!!」

おキヌが横島に飛びつく

横島「早かったのねとちゃうわーー!!!
   あんなん聞いてないっすよ!!!霊力もまるっきり使えないし!!!!
   なんじゃい!こんなもん!!」

見鬼くんを投げ捨てる、ただし壊れないようにソファの上に

美神「まぁまぁ、それで?どうだったの?」

横島「どうもこうもないっすよ…」

ポツリとつい先ほど起こった事を語りだす

美神「ワンピースの女ね」

おキヌ「こ…怖いですね…」

道路がループした事、霊力が使えない事、靴を探さなければいけなかった事
順を追ってゆっくりと話す

美神「それで?どっちの靴だったの?」

横島「両方でした」


55:OiusiVsG0
壊さないようにするのが横島らしいな

58:5SyBzxXEP
両方…だと…



10.
時間は少し遡り
林道で女の霊体と横島が向きあう

女「どっち?」

迫られた横島が出した結論は

横島「わ…分かるかーーー!!!! そもそもお前が無くしたんなら聞くまでもないだろがー!!!!
   他人を巻き込むんちゃうぞー!!! どっちもやるからお前が選べやーーーー!!!!」

切れて丸投げするというものだった
ドバーっと涙を流しながらの情けない姿ではあったが

女「………」

横島「あの…」

無言の反応に横島の威勢は急速に弱くなる

女「……ありがとう」

横島「え!?」

そう女が呟くと
赤かったワンピースがフワリと真っ白なそれに戻る
それと同時に女の手にある赤い靴も白い輝きを取り戻し…
純白に包まれた女は柔らかな微笑みを浮かべて………音も無く消えた

横島「……正解…?」


おキヌ「赤い靴も…血に染まってただけって事ですか?」

横島「そうなんだろうなぁ」

それを聞いた美神が憤慨する

美神「何それ!?『どっち?』って聞いてきといて答えが両方なの!?」

横島「そうなりますね」

美神「卑怯じゃない!そんなの!」

横島「……美神さんの口から聞く卑怯は新鮮ですね」

おキヌ「横島さんっ!」

次の瞬間横島の頭には美神のハイヒールが刺さっていた

横島「いつつ…でもそんなパターンは多いはずですよ?俺の知ってる限りではですけど」

美神「例えば何よ?」

横島「怪人赤マントって知ってます?」

美神「ええ、『赤いマント着せましょか?』のアレでしょ?」

おキヌ「あ、それ知ってますよ!でもそれ赤いちゃんちゃんこじゃありませんでしたっけ?」

美神「土地柄によって違うのかしら?」

横島「赤い紙だったりする所もあるみたいですが…内容は大体は同じです」

痛む頭を摩りながら続ける


11.
夕暮れ時
生徒もすっかりいなくなった校舎のトイレに少年がいた
忘れ物を取りに戻ったのだか、急に便意を感じトイレに飛び込んだのだ

少年「ふぅ」

用を足しトイレから出ようとした瞬間
どこからともなく声が聞こえる

『赤いマント着せましょか?青いマント着せましょか?』

少年は怖くなり逃げようとするが、トイレのドアは開かない

少年「開けて!!開けてよ!!!」

『赤いマント着せましょか?青いマント着せましょか?』

またその声が響く
少年は逃げたい一心でつい答えてしまう

少年「あ…赤いマント!!!」

翌日
そのトイレで背中を引き裂かれ血まみれになった少年の遺体が見つかる
その姿はまるで…赤いマントを着ているようだったと言う

横島「とまぁ、こんな感じですよね」

美神「そうね、多少の差異はあっても大体そんな感じよ」

おキヌ「うぅう」

横島「黄色が追加されてる話もあるみたいですが」

美神「自分達でややこしくしてどうすんのよって話よね」

横島「これの逃げ方ってのが『沈黙』なんすよ…」

おキヌ「沈黙…ですか?」

横島「そう、質問に答えない、何度か沈黙を守れば解放されるって事らしいです」

おキヌ「い…意地の悪い…」

美神「選択肢まで出してそれ以外が正解なんて…ひねくれてるわね」

横島「都市伝説ってのはどれもそんな感じですね、理不尽で一筋縄ではいかない」

少し考える素振りを見せた美神が口を開く

美神「やっかいな事になっちゃたわね…ホント」


12.
おキヌ「どうするんですか?」

美神「こんな危険な事件をこんな安い報酬でやってられないわよ!!」

おキヌ「でも…もう受けちゃったんですよね…?依頼」

美神「うぐっ!!」

痛い所を突かれ、ビシッと固まる

横島「そもそも急にこんな事になった原因は何なんでしょうね?」

美神「そ!それよ!」

横島「え?」

美神「原因さえ押さえれば全ての都市伝説はまたただの噂話に戻るはずよ!」

おキヌ「そ…それはそうでしょうけど…」

美神「………と…いうワケで」

美神とおキヌが愛車のコブラに乗り込む
横には横島がポツンと残されていた

美神「私達が原因を探るから!横島クンは都市伝説を少しでも減らしてちょうだい!」

おキヌ「あの…その…」

オロオロ戸惑うおキヌとは対照的に、美神はさも当然のように言ってのけた

横島「いや…お…俺も連れてってくださいよ!!」

美神「頑張るのよ!!いざとなったら……とにかく頑張って!!」

轟音を響かせながらコブラが発進する
プルプルと震える横島を一人残して

横島「あのクソアマーーーーー!!!!!人を何だと思ってんだーーーーーー!!!!!
   やってられるかーーーー!!!!下着の何枚かでも貰わねーと割に合わんわい!!!!」

コブラが消えた方向に向かってツバを吐く

横島「給料上げろー!チチ揉ませろー!!シリを撫でさせろー!!!
   はぁはぁ…くそ…いつか『惚』の文珠を飲ませてやる…」

脱線した文句を言いながらトボトボと事務所に戻る


13.
おキヌ「あの…美神さん…さすがにあれは…」

美神「どっちみち原因は探らないといけないの、一般人に被害が出る前にね」

おキヌ「それは…そうなんですけど…」

美神「横島クンなら大丈夫…」

おキヌ「め…目を合わせて喋ってください!!」

美神「う…運転中はよそ見しちゃ危ないの!!!」

騒がしくコブラを走らせる

おキヌ「大丈夫でしょうか…横島さん」

美神「大丈夫よ、ワンピースの女も平気だったんだから」

快調に飛ばしていた美神だが
次第にその異変に気付く

美神「この道…こんなに長かった…?」

おキヌ「いえ…」

ヌルリと絡みつくような不快な空気に変わる

美神「信号も無い…これって…」

おキヌ「まさか…美神さん?」

チラリとバックミラーに視線をやる

美神「やられた…」

おキヌ「やられたって…もしかして…」

バックミラーに確かにそれはいた
少しずつ、本当に少しずつではあるが距離が詰まってくる

おキヌ「何なんですかー!何なんですかー!あれ!」

美神「しっかり掴まって!!飛ばすわよ!!!」

アクセルを深く踏み込む
ウンっと音を立ててコブラが加速する

美神「ジェットババアよ」


90:RMu1J7TjO
ジェットババアwwwwwwwwww



14.
おキヌ「ジェットババアですか…」

美神「な!何よ!その呆れた顔は!! 私が考えたネーミングじゃないわよ!!!
   ターボばあさんとか100キロババアとかそんなのばっかりなのよ!!!」

涙目で必死に弁解する

おキヌ「わ!わかりましたから!! それでその…?どんなお話なんですか?」
美神「どんなって…んー…」

いつか聞いたことのあるその話を思い出す

美神「高速道路とかを走ってると後ろから凄い速さで何かが近付いてくるの
   それは凄い速さのお婆さんで…追い越しざまにニヤッと笑う…とかだったかな?」

おキヌ「…」

美神「な…何よ」

おキヌ「それだけですか?逃れる方法は?殺されないんですか?」

美神「分かんないわよ!私だって詳しくないんだから!!」

キャーキャーと騒いでいる最中も
老婆は少しずつ距離を詰めてくる

美神「とりあえず追いつかれないようにしたいけど…100キロどころじゃないわね
   道路がループしてるのか…異次元なのか…事故の心配が無いのだけが救いね」

おキヌ「除霊はできないんでしょうか?」

美神「無理ね」

キッパリと言い放つ

美神「霊力がこれっぽっちも湧いてこないわ、破魔札もただの紙切れよ
   これじゃおキヌちゃんの笛もただの楽器だわ
   久しぶりに本気のピンチってやつかもね」

そう言って苦笑いを浮かべる

おキヌ「美神さん!どんどん近付いてきますっ!!」

美神「嘘でしょ…もう150キロよ…!!」

おキヌ「それに…ニヤリと笑うどころじゃないですよ!」

見ると老婆はゲラゲラと大口を開けて笑っていた
その口には歯も舌も無く、ただ真っ暗な闇が広がっているだけだった

美神「ひぃいいいい」

おキヌ「ひゃああああああ」

愉快そうに笑っているにもかかわらずその目は血走り、見開かれていた


15.
160…170…180…
どんどんコブラの速度を上げる

美神「ど…どう!?」

おキヌ「まだいます!!もうすぐ後ろですよぉ!!!」

バンバンっと車体を叩かれる
叩かれる度に車体にはベットリと真っ赤な手形がつく

美神「い…いくらすると思ってんのよぉ!!」

恐怖心を無理矢理押さえこみアクセルを踏み込む
速度計は200キロを指していた

美神「この車の最高時速は240キロよ!これ以上でも離れないなら…」

おキヌ「あ…!!」

速度計が210キロに達した瞬間
老婆は確かに表情を歪めた

美神「200キロババアってわけね!」

先ほどまでの不快な笑い声は無くなり
代わりに呪詛の言葉を吐き散らす

おキヌ「苦しんで…る?」

美神「同情なんかしてあげないわよ!そのまま極楽に…行かせてあげるわ!」

グンッと最後の加速をかける
マックススピードになる前に老婆の恨みがましい声が響き
そして忽然と姿を消した

美神「やったわ!!」

おキヌ「美神さん!!ブレーキ!!!ブレーキーーーー!!!!」

美神「え!?」

老婆が消えると同時に道路も元に戻る
だが元々長い直線道路だった上に人通りのない時間帯だったのが幸いした
タイヤは随分とすり減ってしまったが、何とか無事に停止する

美神「あーーー……死ぬかと思った…」


117:LCWadesG0
200キロで逃げ切るとか、一般車じゃ無理だろw



16.
同時刻
事務所で横島はくつろいでいた

横島「屋内なら安全だろ…誰が好き好んで外になんか」

言いながらパソコンを立ち上げる

横島「都市伝説についてちょいと調べとくか…何かあった時の為に」

インターネットに接続し、都市伝説について検索する

横島「おぉぉ…これは…なんとも…素晴らしい」

数分後にはいやらしいサイトの巡回に変わっていた

横島「イカンイカン
   こんな事してる場合じゃないのに…男の子め!」

気持ちを切り替えて再度都市伝説について調べる

横島「テケテケ、ジェットババア、あー…人面犬もそうかー…」

それらの項目を見ながら対処法を探していく

横島「ジェットババアは…ニヤッと笑って去って行くだけ?
   あ、こっちでは追いつかれると首を刈られるって書いてるな…こええぇ
   どっちが正しいかはともかく…最悪を考えて行動した方がいいだろうな…」

横島「口裂け女は…
  『ポマードと3回唱える』か『私は目が見えませんが美しい声ですねと褒める』か」

そこまで調べた所で横島はフと視線を感じる

横島「ん?」

キョロキョロと周りを見渡すが何もいない

横島「気のせいか、さてと…他には…と
   ひきこさん…さっちゃん…隙間女…くねくね…夢と違う…ひとりかくれんぼ…
   ………隙間女?」

ゾクリと背筋が凍る

またも視線を感じる

横島「…」

試しにそっと手に霊気を集中させ、文珠を生成させようとする

横島「駄目だ…屋内なら安全?どこがだよチクショー」

なるべく周りを見ないように窓に手をかける
…が、まるで溶接されたかのように窓は閉ざされたままだった

横島「くそっ!なんで俺ばっかりこんな目に…」


17.
横島「美神さんとおキヌちゃんはうまい事逃げたなぁ…」

言いながらパソコンで隙間女の対処法を探すと
それはすぐに見つかった

横島「ふむふむ…一人で家にいる時に視線を感じ、見渡してみるも誰もいない
   それは家具と家具の隙間等にいる隙間女かもしれない…
   彼女と目を合わせると、その瞬間異次元に引きずり込まれる…うお!理不尽だ!
   目を合わせないでいると『かくれんぼ』をしようと持ちかけられる…
   そのかくれんぼで彼女に見つかるとやはり異次元に連れて行かれる…」

それを読んでシクシクと涙をこぼす

横島「異次元にはモガちゃんの時にも行ったけど…
   今回あっちに行っちまうと帰ってこれないんだろうな…」

パソコンの電源を消す

横島「唯一の逃れ方が『かくれんぼで隠れ続ける』なんて…
   こんなもん反則だろ…何時間隠れりゃいいんだよ…」

プツンと、ディスプレイの電源が落ち、画面が暗くなる
その画面には横島の泣き顔が映っていた

横島「ん?」

ディスプレイに映る横島の顔、その後ろには当然部屋の様子も反射して映っている
横島の後ろにある本棚、その本棚と壁のわずかな隙間
そこにそいつはいた

横島「アホかーーーーーー!!!!!!」

ブシャーっと涙と鼻水を噴射しながら叫ぶ

横島「ダイエットすりゃええってもんとちゃうぞーー!!!!
   オナゴはなぁ!オナゴは多少ムッチリしてるくらいのがええのんじゃーーー!!!!」

現実から逃避した横島の叫びが事務所中に響いた


18.
美神「さ、なんとか着いたわね」

おキヌ「ここは…教会」

車と停め、急いで教会の扉を開ける

美神「神父!唐巣神父!」

唐巣「やぁ、来たね」

そこにはいつものように優しい笑顔を向ける唐巣神父と

西条「令子ちゃん、やっぱり来たのか」

オカルトGメンに所属する西条輝彦がいた

美神「西条さんも?」

西条「ああ、都市伝説の実体化についてだろ?」

美神「ええ、これがもし広がると大変な事に…」

西条「全くだ、霊力を制限されるなんてね…久しぶりに恐怖を味わったよ」

美神「…掴まったんですか?」

西条「幸い、大したことは無かったけどね」

ブルっと身震いしながら西条が語りだす

西条「オカルトGメンにもこの都市伝説実体化の依頼は来ていたんだ」

西条「こちらで色々探った所、手掛かりは見つけたんだが
   それについて唐巣神父に相談しようとした矢先だったよ」
おキヌ「何があったんですか?」

少しの間を置いて西条が応える

西条「くねくねってヤツだ」

美神「それって…」

それまで口を閉ざしていた唐巣が続ける

唐巣「そいつを見た者は気が狂うっていうアレかい?」


143:fsc33ZiBQ
くねくねキタ!!!



19.
西条「ええ、正確には『そいつが何か理解した者は』ですけどね
   これは予備知識が役立ちました…無意識化にですが」

美神「どういう事ですか?」

少し考える仕草を見せながら続ける

西条「私が知ってた話はこうです
   とある兄弟が田んぼ等でくねくねとした動きをする何かを発見する
   兄はそれが何なのか理解するも弟は理解できない
   その後、そのくねくねを理解した兄だけが狂ってしまう」

西条「簡単に言うとこんな話です」

おキヌ「それ…対処法とかって…?」

美神「くねくねした物が何なのか理解しない事が対処法」

西条「そういう事だ」

唐巣「だが…君はそれがくねくねだと知っていたんだろう?」

西条「そこですよ、私はあれが『くねくね』だと知っていたんです」

おキヌがポカンと口を開ける

西条「それを遠目で見た時に私は思いましたよ
  『いかん!こいつはくねくねだ!!』ってね」

唐巣「なのになぜ無事なんだい」

西条「いいですか?くねくねと言うのはあくまで『単なる呼び名』なんです
   例えば全く未知の動物がいたとして…
   この動物はとても危険だ!絶対に近寄ってはいけない!と言う知識だけがあったとします
   そしてその動物に出会ってしまった時に…それがどう危険なのか理解しようとしますか?」

美神「なるほど」

おキヌ「どういう事ですか?」

そこから美神が引き継ぐ

美神「簡単に言うと、『何だか分からないけど怖いから逃げた』って事よ」

西条「…まぁそういう事だ」

苦笑しながら頬を掻く


20.
西条「くねくねと呼ばれる怖い奴がいたから一目散に逃げる
   全く興味を持たない………ことくねくねに関してだけ言えばこれが対処法ってわけだ」

おキヌ「そういうのもあるんですねー…」

唐巣「何にせよ無事でよかったよ」

美神「それで?手掛かりって言うのは何なんです?」

西条「おっと、そうだったね、忘れる所だったよ」

そう言いながら一枚の紙切れを取り出す

おキヌ「何ですか…?」

美神「遺書?」

西条「そう、遺書だ」

西条「こいつを書いたのは某大学の教授でね
   その教授は『都市伝説』について研究していたそうだ」

美神「都市伝説について…?」

西条「正確にはそれからくる文化の変化や人間心理だとからしいがね」

唐巣「なるほど、その人が原因になってる可能性は大いにあるね」

西条「ええ、ただ彼はこの遺書を残して失踪しています」

美神「遺体は?」

西条「見つかってない」

やれやれとばかりに首を振る

唐巣「ならまずは彼を探そう」


美神「死体になってるかもしれないけどね」

西条「今の所手掛かりはこれだけだ、手分けして探そう!いいね?」

美神「その前に!!」

ビシッと手を挙げて美神が皆を制止する

西条「なんだい?」

唐巣「どうしたんだい美神くん?」

美神「皆の知ってる都市伝説とそれの対処法をできる限り教えて」

唐巣「ああ!それもそうだ!備えとくに越したことはない」

西条「じゃあ私から知っている話をするよ」


21.
横島「おい」

当然返事はない

横島「お前だよお前」

目を真っ赤に腫らした横島がディスプレイ越しにそいつに話しかける

横島「分かってんだよ!!隙間の!お前!
   かくれんぼ!するんだろ!!このまま逃がしちゃくれねーんだろ?」

ディスプレイにうつる女の顔がニタァと嬉しそうに歪む

横島「ひぃいいいいいい!!!!!!!!!!!!」

横島「言うんじゃなかったー!!なんちゅー顔しとるんじゃー!!!!
   ちょっと可愛いかもとか思った自分に腹が立つ…」

するとどこからともなく声が響く

女「お前…鬼」

それは横島の予想を根底から覆した

横島「俺が鬼ぃ!!?? そ…そんな事書いてなかったじゃないかーーーー!!!!!」

女「1時間」

それだけ言うとディスプレイに映っていたそれは姿を消す

横島「1時間!?何が!?制限時間!?」

ワタワタと慌てながら近くにあった腕時計をつける

横島「23時…か」

今日が終わるまで、それが横島に与えられた時間だった

横島「男の幸せを全うする前に死ねるかってんだ!!」

すぐさま行動を開始する

横島「隙間女っつーくらいだし…隙間に隠れんだろうな…」

言いながら棚の隙間や壁の隙間を覗き込む

横島「なんでかくれんぼなんだよ…
   パンツ当てクイズとかするミニスカの女が出てくる都市伝説とかないのかね
   当てたら『負けました…貴方のものになります』とか言っちゃってさ~~~!!!」

またも脱線した妄想をしながらあちこちを探す


163:73PbeoFHQ
これでこそ横島www



22.
10分後
ダクダクと汗をかきながら立ち止まる

横島「おかしいな…隙間は全部探したぞ…他に隙間なんかあるか…?」

ガタガタとクローゼットの中を覗き込む

横島「おぉ!美神さんのネグリジェが!!!け…けしからん!!
   少しくらい貰っても罰は当たらんわな!こんな目に合わされてんだから!」

そう正当化し美神の下着をポケットにねじ込む


20分後
台所の棚を開け、奥を覗く

横島「いないか」

チラリと腕時計を見て苦い表情を浮かべる

横島「隙間に隠れてるわけじゃないのか…? まさか外って事は無いだろうな…
   いや…ありうるぞ…理不尽な都市伝説はいっぱいあるじゃねーか…」

バタバタと玄関に向かう
ドアノブに飛びつくも、まるで動く気配がなかった


170:73PbeoFHQ
>>下着をポケットにねじ込む
死亡フラグじゃねえかwwwwwww

171:fP4nARo90
いいえ、強大な敵を打ち破るキーです



23.
30分後

横島「あと30分…やばいな…でも外に出れない以上中にいるって事だ」

バサバサと本棚の本をひっくり返す

横島「文珠さえ使えりゃなぁ…」

ロッカーの中身を全て出す

横島「ここでもない…物置か…?」


40分後
物置の中にある物をどけてみるも見つからない

横島「いない…もう時間が…ん…?」

なにげなく見上げた天井
そこにわずかな切れ込みが見える

横島「天井裏か!!!!」

天板を外し中を覗き込む
そこには漆黒が広がっているだけだった


50分後
持ってきた懐中電灯で天井裏を照らす

横島「こええぇ
   なんだこの空間…こええぇえよぉおおお
   しかもいねぇ…もう時間がないのに…」

ガクガクと震えながら辺りを見渡す

横島「いないのか?ここじゃない?もう…」

自然と涙が溢れる


55分後
横島が諦めかけたその時だった

横島「なんだこれ…絨毯?」

天井裏に一枚の小さな絨毯が敷かれていたのだ

横島「何でこんなもんが」

何の気無しにそれをめくった瞬間
『絨毯と床の隙間』にそいつはいた

横島「うわぁああああああぁあああああ!!!!!!!!!!」

横島の絶叫がこだまする


24.
その遺書はごくありふれた物だった
ありふれた書き出しにありふれた文面

美神「最後だけね、気になるのは」

最後に添えられたそのありふれていない一文は
『私こそが都市伝説となり皆を見降ろそう』
と締められていた

美神「見降ろそうって言うのはヒントと思うのよね」

おキヌ「どこか高い所って事なんでしょうか?」

美神「恐らくね」

西条「よし、私は近くの山に人員を動員させよう」

唐巣「私は廃ビル等の高い建物を」

美神「私達はこの教授の家の付近でそういう場所がないか調べてみるわ」

そう言って各々が行動する

おキヌ「もうあのお婆さんは出ないですよね?」

美神「どうかしら…まぁ出た所でまたぶっちぎってあげるわよ!行きましょう!」

おキヌ「は…はいっ!」

バタンと車に乗り込む

西条に聞いた住所を頼りに車を走らせる

美神「とんだ大事になっちゃったわね」

おキヌ「横島さん…大丈夫かな…」

美神「……」

おキヌの言葉に美神も表情を強張らせる

おキヌ「心配ですね」

美神「…ちょっとはね」

顔を赤らめながらそう呟く


25.
西条「山は都市伝説の宝庫とも言える! 各員油断するな!!慎重に捜索に当たれ!!」

西条の号令が響き
オカルトGメンの捜査員が山道を捜索する

西条「頼むぞ…これ以上ぼ被害の拡大は防がねば」

真夜中の山道は多くの捜査員に埋め尽くされる

西条「無線を離すな!霊力が使えなくても無線が生きている可能性はある!!」

唐巣「何かあるかい?」

ピート「いえ!このビルには何の気配も感じませんね」

唐巣「霊力も使えるな…外れか」

唐巣の横にはヴァンパイアのハーフでもあるピートと

エミ「ピートォ!怖ーい!」

そのピートに惚れこむ小笠原エミの姿があった

唐巣「すまないね、強力してもらって」

エミ「構わないワケ、放置してたらオタクだけじゃなく私にも被害があるワケ」

・・・・・

おキヌ「この辺ですね」

美神「無事に着いちゃったわね…なんか…拍子抜けと言いますか」

おキヌ「いいじゃないですか!!」

美神「そう怒らないでよ!ほら!探すわよ!」

ゆっくりと車を走らせながら
辺りを探索する

美神「どう?何かある?」

おキヌ「美神さん!あれ!」

おキヌが指差した先には山があり
その中腹あたりに白い建物が建っていた

美神「くさいわね…プンプン匂うわ」

おキヌ「……本当に行くんですか?」

美神「おキヌちゃんが見つけたんでしょ!!」

そう言って車をそちらに向け走らせる

美神「見鬼くんの反応を見といてね」

おキヌ「はい!」


26.
山道を登り建物に近付くにつれ
車に積んでいた見鬼くんがカタカタと反応を見せる

おキヌ「美神さん…」

美神「いるわね…」

ガタガタと反応が激しくなる

おキヌ「ひぃいいいん」

美神「もうすぐよ」

山道を登り切った所で建物の入り口が顔を出す
その瞬間、ピタリと見鬼くんの反応が止まる

美神「え?」

おキヌ「嘘!だって…え?」

二人は戸惑う

おキヌ「だって…この先にいるのは…教授じゃないんですか!?」

美神「そう…思ってたんだけど…」

おキヌ「教授は都市伝説じゃないんでしょ!?なのになんで!
    なんで霊力が使えなくなっちゃうんですかぁ!!!」

美神「…教授かもしれない」

おキヌ「でも!!!」

美神「教授が都市伝説に…なったとしたら?」


27.
美神「遺書にあったでしょ…『私が都市伝説になる』って」

おキヌ「でもそんな簡単に…」

美神「そうね…どれほどの未練、思念を込めればいいのか想像もつかないわ」

おキヌ「そんな事…可能なんですか?」

美神「さぁ…未練を残して死んだ事がないから分からないわ…」

フゥと息を吐く

美神「ただ前例は無いわ…異例中の異例よ」

キッと目の前の建物を睨む

おキヌ「もう潰れた病院みたいですね」

美神「どんな都市伝説がお待ちかねかしら?」

おキヌ「対処法は…」

美神「分からないけど…『ルール』ある限り対処法もあるわよ」

言いながら門を開け、一歩を踏み出す
敷地内に入った途端に空気が重くなり冷や汗が吹き出す

美神「予想以上ね」

おキヌ「…うぅうう…」

扉には鍵がかかっていないのかすんなりと開く
ただし、二人が中に入ると同時に扉は閉まり、嘘のようにピクリとも動かなくなった

おキヌ「ど…どこに…行きましょう…」

ガタガタと震えながらおキヌが尋ねる

美神「セオリー通りに行くなら屋上か霊安室ってとこね」

そう言って一歩踏み出すと
目の前の受付カウンターから『カラン』と何かの音がする


28.
見るとカウンターの上には赤いクレヨンが転がっていた

美神「病院にクレヨン?」

おキヌ「これって…ありましたよね?都市伝説で…」

美神「あったわね…青いクレヨンだったかしら?」

それは西条に聞かされた都市伝説
一人暮らしを始めた男がいる、彼は念願の一人暮らしに大いに浮かれていた
友人達を呼び毎日のように騒ぐ
一人の友人がおかしな事を言いだすまでは


友人「この家…何かおかしくないか?」

男「何言ってんだ?」

友人「気配がするんだよ…夜中とかに…誰かが壁の向こうから見てるみてーな…」

男「やめろよ、念願の一人暮らしにケチつける気か?」

友人「引っ越してきて何かおかしな事はなかったか?」

男「ねーよ…いや…一度だけ…青いクレヨンを見かけたな…」

友人「青いクレヨン?」

男「うん、掃除終わって…完璧に片付けたはずなのに…床に落ちてた」

友人「ただのクレヨン?」

男「そう、いたって普通のクレヨン」

その日の会話はそれで終わった

けれど少し経ったある日、男は友人に呼び出された

友人「お前の家やっぱりおかしいよ」

男「まだ言うのか」

友人「違うんだ!これを見てくれ」

そう言って取り出したのは男の家の間取り図だった

友人「ここ!!ここに部屋があるんだ!!」

友人の指した所には確かに小さな部屋が記載されている

友人「でもお前の家にこんな部屋なかった!壁だったろう?」


29.
二人は男の家に向かう
家に着き、間取りと見比べてみると…部屋のある場所は確かに壁だった
ただよく見ると…まるで塗り込めたようにそこだけ色が違っているのだ…

男「壊そう…壊して開けよう」

男の言葉で二人は壁を壊す…
簡単にボロボロと崩れた壁の向こうから、小さなドアが顔を出す

友人「やめないか…?」

男「ここまで来て何を!!」

意を決して男はドアを蹴り破る
そこには小さな子供部屋があり…

壁一面に
『おかあさんあけてよおかあさんあけてよおかあさんあけてよおかあさんあけてよ…』
と書かれていた

美神「ってヤツね」

おキヌ「でもここ病院ですしね…」

思い出しながらおキヌは涙目になっていた

美神「何かあると思っていいでしょうね…」

おキヌ「持っていきますか…?クレヨン」

フム…と考える

美神「そうね…かさばる物じゃないし…持っていきましょうか
   持ってても意味は無いかもしれないけどね」

クレヨンを握りカウンターを後にする
病院内は暗く、湿り、消毒液の嫌な臭いが鼻を衝いた

美神「ほーんと…ホラー映画にはもってこいね」


30.
「…んせ…こ…んせい!先生!!横島先生!!!」

大きな声に次第に横島の意識はハッキリする

横島「な…なんだよ…わぷっ!!」

次の瞬間横島の顔に生温かいベッチョリしたものが触れる
それが舌であると理解するのに少し時間がかかる

横島「うわ!うわわ!!よせ!やめろ!!シロ!!!」

シロ「先生!!よかった!無事でござるか!!」

横島「無事だっつーの!何が…あ」

そこでようやくさっき起こった事を思い出す

横島「見つけるだけで良かったのか…助かった…」

シロ「先生!!おかしいでござる!山にも妙な気配が漂っていて…」

横島「くそっ!尋常じゃない速度で広がってるのか!」

シロ「それで拙者…先生が心配で…」

横島「ああ、ありがたいよ…一人で逃げるにも…どこまで行っても逃げきれないときてやがる…」

シロ「先生?」

横島「こうなりゃ全力で解決した方がよっぽど早いわい!!」

シロ「おぉ!先生が燃えているでござる…ところで…先生…」

横島「ん?」

シロ「なんで先生のポケットから美神どのの下着が出てるでござるか?」


31.
横島「………これはだな…」

シロ「………?」

横島「シロ!お前が来ると予想していたんだ!!」

シロ「なんとっ!!」

横島「さぁ!これの匂いを辿って美神さんの元に向かうぞ!!!」

シロ「了解でござる!!!」

うまく追及を逃れ自転車に跨る

横島「シロ、先導してくれ!ついていく」

シロ「本気で走っていいでござるか?」

横島「う…うむ!何とかなるだろ!」

そう言って横島は手のひらに霊気を集中する

横島「都市伝説に捕まらない限り霊力は使える!」

生成された文珠には『速』の文字が浮かび上がる

横島「いくぞ!」

シロ「はいでござる!!!」

グンッとペダルを踏み込み自転車を漕ぎ出す
それと同時に文珠を発動させる

シロ「おぉおお!!さすが横島先生!!速いでござるなー!!!」

横島「あっはっは!だろうー!」

言葉とは裏腹に横島の顔はプルプルと引きつっていた

横島「これはまずい!速すぎる!!足が!!足がああああああ!!!!!」

叫びながらもどんどん進む

横島「もげるー!!!もげるぁぁあああああああ!!!!!!」

横島の叫びが深夜の住宅街に響く


32.
カツンカツンと美神のハイヒールの音だけが反響する

美神「ナースステーションみたいね」

中を覗き込むがもちろん誰の姿も無い

美神「ヒントくらい無いのかしら」
おキヌ「美神さぁん…怖くないんですか?」
美神「怖がってる暇なんてないでしょ?」

そう言ってスタスタと先に進もうとする
…がそこで唐突に聞きなれない音が響く

ピコンピコンという音と共にナースステーションにあるボードが光る
それはナースコールの呼び出し音だった

おキヌ「み…美神さぁぁあん…」

美神「電気なんか来てるわけないのにね…409号室ね」

ボードを見て呼び出しのある部屋の確認をする

美神「エレベーターが使えるワケもないし…」

おキヌ「ほっ」

個室に閉じ込められる事を避けれ、おキヌが安堵の息を吐く

しかしおキヌにとって残念な事が起こる
ポーン…と言う音と共にエレベーターが美神達の階に到着し…開いた

美神「乗れってさ?」

おキヌ「い…嫌ですぅうううう!!!」

ジタバタともがくおキヌを引っ張りエレベーターに乗る

おキヌ「美神さんひどい!ひどいです!!」

美神「しょうがないでしょ!!」


33.
ギャーギャーと言い争う二人を尻目に上昇するエレベーター
そのエレベーターは、やはりというか当然のように途中で停止した

おキヌ「…ほら…言ったじゃ…ないです…か」

ビクビクと身を縮ませる

美神「……」

エレベーターのガラスの向こうはただ黒い壁があるだけだった

美神「なんとか開けたりできないかしら…」

そう言って美神が手を伸ばした瞬間
ガラスにバンっと真っ赤な手形がつく

美神「ひぃいいい!!!!!」

おキヌ「うひゃあぁあああああ!!!! ほらー!ほらー!!!だから言ったじゃないですかー!!」

美神「大丈夫!大丈夫!!外からなんだから!」

気がつくとエレベーターは動いていた
ウゥーンと音を立てながら上昇を再開する

美神「ね?ほら!」

おキヌ「美神さん…でも…その手形…」

真っ赤な手形からはタラタラと滴が垂れており
その滴は途切れる事なくエレベーター内の床まで伸びていた

おキヌ「外からじゃ…ない」

美神「……ふ…ふふふ…」

なんとなく笑ってみる

おキヌ「ふふふじゃないですよ!」

ポーンと音がして4階に到着する
我先にと二人はエレベーターから抜け出す

美神「ふぅ」

一息ついて歩き出す

おキヌ「あんな怖い思いしたら…もう怖い物なんてありませんよね!」

グッとガッツポーズをしながらおキヌが強がる

美神「霊力さえ…霊力さえ使えれば…」


34.
409号室に着く
ガチャリと音を立ててドアを押しあける
そこは小さめの個室だった

美神「何かない?」

ガサガサと部屋の中を探る

おキヌ「あっ!」

おキヌが声を上げたのと同時にドアが閉まる

美神「しまった!!!」

カチャンと鍵の閉まる音

おキヌ「美神さん!これ!ベッドのシーツの下に!!」

おキヌが渡した物は鍵だった

美神「ここの鍵?……駄目ね違うわ」

試してみようにもそのドアに鍵穴らしい物は見当たらなかった

おキヌ「じゃあどうやって…」

美神「ここに鍵があったんだもの…ここに来るまでは間違ってないはず」

ガンガンとドアを蹴ってみるがビクともしない

美神「駄目ね」

おキヌ「この部屋に手掛かりがあるんでしょうか?」

改めて部屋を見渡す

おキヌ「小児病棟でしょうか…?」

見るとベッドにはぬいぐるみ
そして横の棚には写真立てが飾られており
中にはかわいらしい女の子の写真が入っていた


35.
美神「まるでロールプレイングゲームね
   アイテムを手に入れて…進んで…またアイテムを手に入れて…」

そこまで呟いて顔をあげる

おキヌ「美神さん!」

おキヌも何かに気付いたように顔を上げる

美神「アイテムあるじゃない! 赤いクレヨン!!」

クレヨンを取り出し
ドアに直接『おかあさんあけてよ』の文字を書く

美神「……」

カチャン…という音がして
キィイとドアが開いた

おキヌ「やりましたね!!!」

美神「さて!あとはこの鍵の使いどころよ!」

グッと鍵を握りしめる

美神「見降ろすなら…やっぱり霊安室より屋上よね」

おキヌ「はい」

屋上に向かう階段を上りながら美神がそう言う

美神「さ…これで決着と行くかしら?」

屋上への扉の前で鍵を取り出す
鍵穴にその鍵がピタリとはまり……
カシャンと、つかえる事なく回り切った

おキヌ「やっぱり屋上でしたね…」

ゴクリと飲み込むツバの音さえうるさく感じる
風も吹いているというのにそこは全くの無音の世界だった

美神「いかにもラスボスって感じ、大当たりね」

冗談まじりにそう言うがそこには誰の姿も無い

おキヌ「また…アイテム探しでしょうか?」

美神「いいえ…霊力が制限されてても感じるわ」

ギンっと美神が見上げる先には、給水タンクが一つ
異様な、とても異様な空気を放っているそれがあった


36.
美神「いい加減終わりにしましょう」

美神がそれに向かって叫ぶ

美神「貴方はもうただの死人!こっちの世界にいつまでも介入しないで!
   都市伝説の凄さを認めさせたいなら生きるべきだった!
   生きて研究を続ければよかった!
   
   アンタは逃げたのよ!とっとと負けを認めて成仏なさい!!!」

その声に反発するかのように給水タンクが揺れる
ギシギシと、男の鉄の棺桶は揺れる

バンバンとタンクが強い力で叩かれる
手の形にタンクが内側からへこむ

おキヌ「怒ってる…」

美神「怒ってるのは…こっちも同じよ!!!」

そう言ってガーターベルトに挟んでいた神通棍を取り出す

おキヌ「美神さん!?霊力は!?」

美神「霊力なんかなくても…」

ブンッとそれを振り上げる

美神「腕力はあるでしょうがーーーーー!!!!!」

躊躇なく神通棍を振り下ろす

美神「こんのぉ!!!」

ガキンと弾かれる
何度も何度も

美神「くっ!!!」

美神の手にビリビリとした振動のみが残る
給水タンクには傷一つ、正確に言えば細かい傷は沢山あったが
それを破壊するほどの傷は一つとしてつかなかった

美神「もっと…もっと大きな物理的な力…
   こちらには霊力を制限するくせにあっちは霊力でのコーティング…
   卑怯、理不尽…都市伝説にふさわしいわ」

そこまで言って違和感に気付く

美神「そうよ…都市伝説。こいつ…都市伝説になってるのよ!」

おキヌ「それは…そうですけど…」

美神「ならあるはずよ…!!! ルールに基づいた対処法がねっ!!!」


37.
美神「ここまではルール通りだった!
   都市伝説の理不尽な、けれど救いのあるその対処法さえ分かれば…」

ギリッと歯を食いしばる

おキヌ「でも…もうアイテムはありませんよ!」

美神「…………分からない…!!」

ガンっと床を神通棍で叩く

美神「分からない!」

「………ぉ……の…やろ…ぉぁぁあああ!!!おがーーちゃーーーん!!!!!!!」」

その声は唐突、あまりに唐突だった

美神「よ…横島クン!?」

おキヌ「横島さん!!!!!」

声の主は横島忠夫、彼だった
そしてその横島忠夫はどういうわけか空から降ってきたのだ
ベチョッっと情けない音を立て落下する

美神「な…何で…!?」

横島「うぐぐ…無茶しやがって…」

美神「え!?」

シロ「先生ーーー!大丈夫でござるかー!!!美神どのー!おキヌどのー!!!」

ヨジヨジとシロが外壁を伝って屋上まで上ってくる

シロ「さすが先生!無事でござったか!!」

おキヌ「シロちゃん!!」

ブシャーと頭から流血させながら横島が精いっぱいかっこをつける

横島「助けに来ましたよ、男横島が」

美神「な…何を…」

戸惑う美神に横島が続ける


38.
横島「美神さんらしくもない」

美神「な…何がよ?」

横島「卑怯な相手に対しては……卑怯でいいでしょう?」

そう言ってバッと振り返り
大声で叫ぶ

横島「ヨコシマダイナマイト!!!!」

同時に横島の真上の空がチカッと光り
何かが給水タンクに向かって発射される

ガンッという大きな音の後
タンクはべコリと大きくへこんでいた

マリア「横島さん・大丈夫・ですか」

それはマリアだった
マリアの腕がワイヤーと共に発射されたのだ

美神「マ…マリア!!!」

シロ「おー!さすがでござるなぁ!」

横島「俺達が連れてきたんですよ、ここまで俺を運んでくれたのもマリアです」

得意げな横島の横にマリアが着地する

マリア「いけます・装甲・破壊可能」

美神「ふふふ…そうね…どうにかしてたみたい」

おキヌ「そうですよ!こっちばっかり真面目にやる事ないですよ!」

シロ「拙者は役に立てませなんだか…」

横島「何言ってんだ、シロがいなけりゃここまで来れたかも分からないんだぞ」

パンっと美神が自分の頬を叩く

美神「さぁ!!これで本当に終わりにしましょう!! お願い、マリア…奴の棺桶を…破壊して!」


39.
ひと際大きな音に続き
バチャバチャと水の溢れる音がする

美神「…」
おキヌ「…」
横島「…」
シロ「…」
マリア「…」

全員が無言でそれを見つめる中
バチャバチャという音に混じりドサッと重たい物の落ちる音が響く

横島「あれっすか?」

美神「そ、今回の原因」

横島「なんか…あっけなかったですね」

美神「そういうもんよ」

皆の霊力はタンクが破壊された瞬間に元に戻っていた

横島「おキヌちゃん…力貸してくるかな?」

おキヌ「はいっ」

嬉しそうに横島に駆け寄る

横島の手に『浄』の文珠が生成される

横島「おキヌちゃんの慈しみの力で送ってやってくれ」
おキヌ「はい」

横島の文珠とおキヌの祈りで
教授の魂は送られる
それは淡い光となり、蛍を連想させた

美神「……それじゃあ…帰りましょうか」

おキヌ「後で西条さんや唐巣神父にも連絡しないといけませんね」

シロ「拙者が先生と行くでござるよ!!」

横島「な!なんで俺を付き合わせるんじゃ!」

美神「ふふ、そうね、そうしなさい」

皆で踵を返す

美神「本当にありがとう、貴方がいなければどうなっていたか分からないわ」

マリア「みんな・守る・マリアも・嬉しい」

こうして、ようやく安いくせに大変な依頼を解決する事ができた


40.
事務所に帰った美神の口から放たれたのは怒号だった

美神「ヨコシマーーーー!!!!!この散らかり具合は何なのよ!!!!!」

横島「いや!俺だって大変だったんですよ!!隙間女がですね!!」

美神「クローゼットまで!!!アンタねぇ!!!」

おキヌ「あんな事件の後なのに…」

呆れ顔で二人を見つめる

おキヌ「あれ?横島さん…そのポケットからはみ出てるの…」

横島「……」
美神「……」


美神から報告をうけた西条が唐巣と向き合い座る

西条「という事です」

唐巣「はは、なんとも美神くんらしい
   しかし…これで解決したから良かったものの…もし無理だったらと思うと…
   最後の教授の都市伝説…それの対処法は何だったんだろうか?」

西条「彼がもういない以上推測に過ぎませんが…」

西条が考えを口にする

西条「彼の悲願が『彼の思いを世間に認めさせる事』だったとしたら
   それの対処法はやはり『彼のルールを無視し、否定する』というものじゃないでしょうか」

唐巣「ははは…なら美神くんの、いや美神くん達の行動は」

西条「ええ、まさに『無視し、否定した』わけです」

唐巣「ならば…ああ、ならばそうだったんだろう」

満足そうに唐巣が頷く

西条「今回の一件を私達が忘れる事はないでしょう
   そういう意味では…彼は目的を達成したのかもしれない」

唐巣「敗者は…いなかったと?」

西条「勝者もですが」

二人は顔を突き合わせて、声をあげて笑う


41.
シロ「あ!先生!先生!!」

横島「お!なんだー!シロはいつも可愛いなぁ」

美神に殴られボロボロいなった横島が応える

シロ「そんな…照れるでござるよ…っとそれより見て欲しいでござる!!」

横島「ん~?」

シロは後ろ手に隠していた物をバッと取り出す

シロ「子犬を拾ったでござる!!」

横島「おー!可愛…か…」

横島の動きが止まる

シロ「先生?」

その子犬の顔はどう見ても犬の顔をしていなかった
まるで…そうまるで人間のような…

横島「み……美神さぁあああああああん!!!!!!!!!!!」

シロ「先生!どうしたでござるか!!」

それを見ながら犬が呟く

犬「ほっといてくれよ…」


おしまい



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